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熱帯夜に溺れる
第6章 泳げない魚たち
 電車を見送った莉子の行動を純は責めなかった。「あと2分じゃ無理だよな……」と苦笑混じりの溜息をついた純は夜の帳が落ちた駅前のビル群を見渡した。

「この辺はビジネスホテル多いし、泊まる場所に不自由はしないね」
「まだ純さんと一緒にいたい」
「莉子……それは……」

 触れた彼の指先が、ぴくりと動く。昔よりも筋が目立つ手の甲をそっと撫でた莉子の指先が純を絡め取った。

「今……彼女、いる?」
「いないよ」
「ほんとう?」
「俺が莉子に嘘ついたことある?」

 振り払われるどころか、きゅっと握り返された彼の手は熱い。かぶりを振る莉子も純の骨張った指にさらに指を絡めた。

「莉子は彼氏は……?」
「浮気されて1ヶ月前に別れた」
「……そう」
「お互い決まった相手がいないなら私達の間に何かあっても傷付ける人はいないよね?」
「本気?」
「本気だよ。純さんは? 私が欲しくないの?」

 答えがわかりきった問いを純に投げかける莉子はどうしようもない策士だ。案の定、本能と理性の狭間で瞳を揺らす純は髪をくしゃくしゃと掻き上げた。

「その返しはずるいなぁ……」
「酔った勢いで口説く純さんの方がずるい」
「……それもそうだよな」

 攻防戦の敗北を認めた純が失笑すると、莉子も口元を斜めにして微笑んだ。繋いでいない側の手で彼は引き出物の紙袋を持ってくれた。

 ふたりの歩みは真っ直ぐ駅の裏側に向かっている。毒々しいネオンで彩られたラブホテル街が熱帯夜を泳ぐ男女を妖しく誘う。

 ホテルの部屋に入った瞬間に我慢の限界を超えた莉子と純は強く強く抱き締め合った。11年間叶わなかった愛しいぬくもりとの再会は抱擁だけでは足りない。

「莉子……莉子……」

 耳元で純に何度も囁かれる自分の名前がくすぐったい。痩せた胸板から顔を上げれば、莉子を欲しがる男がひとり、唇を奪いにやってきた。それは優しい乱暴だった。

「チュ、チュパ、チュッ……んっ、純……さぁ……ん、チュッ」

 唇も唾液も呼気も言葉も心も、莉子のすべてを奪う荒々しいキスの最中に腰をぐっと引き寄せられた。さらに深く繋がった口内でアルコールの味がするふたつの舌が唾液の音を響かせ絡み合う。
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