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熱帯夜に溺れる
第6章 泳げない魚たち

ベッドの隣の壁は鏡張りになっている。この鏡はついさっきまで、身体を抱き合わせて絶頂を迎えた男女を映していた。
けだるげに上半身を起こした莉子は背中の素肌を鏡に映した。汗ばんだ背中に点々と散らばる赤い刻印は、腰の付近まで続いている。
莉子の隣で身動いだ気配はこの赤い刻印を刻みつけた張本人のもの。莉子と同様に上半身を起こした純が莉子の肩を抱き寄せる。
「どうした?」
「純さん、おしりの近くまでキスマークつけたでしょ……。背中が真っ赤」
「真っ赤なのは背中だけじゃないけどね」
穏やかな口振りで意地悪な眼差しを送る純の手が莉子の胸元に伸びた。鎖骨の下、乳房、腹部、太もも、背中……首筋を避けたほぼ全身に純は刻印を刻みつけた。まさに白肌を埋め尽くす赤い薔薇だ。
「キスマーク製造変態オジサン……」
「変態オジサンは莉子限定だよ」
軽めのキスを交わす間も純の手のひらは莉子の乳房を包み込んで離さない。そのままじゃれついたふたりの身体はゆっくりと傾き、またベッドの底に逆戻り。
「私と別れた後、誰かと付き合った?」
「付き合っていないよ。ずっと独り身。彼女はいなかった」
「本当に?」
シーツの擦れる音がして、莉子の胸に顔を埋めていた彼が視線を上げた。
「信じられない?」
「だって……私よりも若い子がお店に入ってきたら、純さんはフラフラと吸い寄せられて一目惚れしちゃいそう」
「俺はそんなに惚れっぽくないよ。それに若ければいいってものでもない。莉子に惚れたのも莉子の年齢が若いからではなかったんだよ。莉子だから好きになったんだ」
とろけるような甘い言葉を囁かれても、莉子はどうにも腑に落ちない。
けだるげに上半身を起こした莉子は背中の素肌を鏡に映した。汗ばんだ背中に点々と散らばる赤い刻印は、腰の付近まで続いている。
莉子の隣で身動いだ気配はこの赤い刻印を刻みつけた張本人のもの。莉子と同様に上半身を起こした純が莉子の肩を抱き寄せる。
「どうした?」
「純さん、おしりの近くまでキスマークつけたでしょ……。背中が真っ赤」
「真っ赤なのは背中だけじゃないけどね」
穏やかな口振りで意地悪な眼差しを送る純の手が莉子の胸元に伸びた。鎖骨の下、乳房、腹部、太もも、背中……首筋を避けたほぼ全身に純は刻印を刻みつけた。まさに白肌を埋め尽くす赤い薔薇だ。
「キスマーク製造変態オジサン……」
「変態オジサンは莉子限定だよ」
軽めのキスを交わす間も純の手のひらは莉子の乳房を包み込んで離さない。そのままじゃれついたふたりの身体はゆっくりと傾き、またベッドの底に逆戻り。
「私と別れた後、誰かと付き合った?」
「付き合っていないよ。ずっと独り身。彼女はいなかった」
「本当に?」
シーツの擦れる音がして、莉子の胸に顔を埋めていた彼が視線を上げた。
「信じられない?」
「だって……私よりも若い子がお店に入ってきたら、純さんはフラフラと吸い寄せられて一目惚れしちゃいそう」
「俺はそんなに惚れっぽくないよ。それに若ければいいってものでもない。莉子に惚れたのも莉子の年齢が若いからではなかったんだよ。莉子だから好きになったんだ」
とろけるような甘い言葉を囁かれても、莉子はどうにも腑に落ちない。

