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熱帯夜に溺れる
第2章 夏の夢
 1階からビルの裏手に出てコンテナにふたりで協力してゴミ袋と段ボールを詰めた。
 時刻は17時を過ぎたところ。莉子と純はあと1時間で勤務終了だ。
 夏の空にはまだ太陽が君臨していた。

「あの……」

 空の台車を押す純の背中に、勇気を振り絞って声をかけた。彼は立ち止まり、顔を莉子に向ける。

「今日、お仕事の後にお時間ありますか?」
「うん、あるよ」
「竹倉さんにお話したいことがあるんです」

 純が口を開くまでに間があった。どれくらい無言の時間を共有しただろう。
 その間も彼は台車の持ち手を片手で掴んで軽く押したり引いたりを繰り返し、何かを思案している様子だった。

「仕事の話? それともプライベートな話かな?」
「それは後のお楽しみです」
「気になるなぁ。楽しみにしておく」

 微笑した彼に莉子も微笑で答えて、莉子達はエレベーターに乗り込んだ。
 エレベーターに好きな人とふたりきり。ガタガタと軋む狭い箱の空間で莉子の心臓も大きな音を立てている気がする。

「帰り、多分俺の方が早く着替え終わるよね」
「そうですよね……、私もなるべく早く着替えるようにします」
「ゆっくりでいいよ。ちゃんと待ってるから」

 彼の言葉が嬉しくて泣きそうになる。
 6月の雨の帰り道、純は待っていてくれなかった。莉子を置いて先に歩いてしまった。
 でも今日は、もしも莉子が身支度に手間取ったとしても待っていてくれる。

 今日、莉子が生理痛に悩まされていなかったら?
 今日のゴミ捨て担当が莉子じゃなかったら?
 おそらく純とふたりでゴミ捨てを行える事態は二度と訪れなかっただろう。
 こんな風に会話もできず、告白のタイミングを見失っていたかもしれない。

 これは偶然? 必然?
 偶然は何個集まれば必然になる?
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