この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
熱帯夜に溺れる
第2章 夏の夢
 エレベーターが1階で扉を開いた。店舗を出て近くの駐輪場に停めた莉子と純の自転車を引き取り、ふたりは公園まで自転車を引いて一緒に歩いた。

 夏の夕暮れどき。少しだけ暑さの消えた街は、正体不明の解放感に満ちている。

「井上くんとはどうなの?」

 道を歩く最中、唐突に出た井上の名に莉子は首を傾げる。何故このタイミングで井上の話題を?

「井上さんって、あのお喋りな井上さんですよね?」

 莉子の言い方が面白かったらしく、純は苦笑いして頷いた。

「そうそう。彼が休みの日は比較的静かだよね」
「井上さんがどうって言うのは……?」
「俺が言っていいのかわからないけど井上くんは佐々木さんが好きだと思う。思い違いならごめんね」

(井上さんが私を好き? 確かに嫌われてはいないと思う。でも井上さんに恋愛感情を抱かれているとも思えないなぁ。鬱陶しいと思う時は多々あるけど)

「どうなんでしょう。井上さんに告白めいた言葉を言われたことはありませんし……。それに私は好きな人がいるんです」

 とうとう打ち明けた好きな人の存在。純がどんな反応をしているか確認するのが怖くて、横に並ぶ彼の顔を見上げられない。

「好きな人いるんだね」
「……はい」

 この状況で、この雰囲気で、それがどういう意味を持つのか大人の男はわかっている。彼の声はかすかに上擦って震えていた。

(お願い察して! 察してクダサイ……ああもうダメ。恥ずかし過ぎて色々と無理っ!)

 今すぐ逃げ出したくなる衝動を抑えつけて莉子は八丁通りに入る。モザイクタイルの歩道を通って公園の入り口に自転車を停め、園内の目印である大きな噴水の前のベンチに並んで腰かけた。
/146ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ