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熱帯夜に溺れる
第3章 熱帯夜に溺れる

浴室の片隅に置かれたプラスチックケースにはメンズ用洗顔料、シャンプーとリンスが一体になったリンスインシャンプー、固形石鹸があった。
石鹸は子供の頃に嗅いだような懐かしい匂い。ゆるめのシャワーを浴びてさっぱりした莉子は純に借りた白色のTシャツを身につけた。男物のぶかぶかのTシャツは莉子の腰までをすっぽり覆い隠している。
共に借りたハーフパンツは履かなかった。Tシャツが大き過ぎてワンピース代わりになるし、ハーフパンツは履いてもずり落ちてしまうのだ。
洗面台の前でスキンケアを終え、脱いだ服と洗顔セットを抱えてキッチンと洋間を隔てる引き戸を開けた。
「シャワーありがとね」
「うん」
純はソファーに座ってぼんやりとしていた。彼の手には缶ビールがある。
「お酒、あまり飲まないんじゃなかった?」
「普段はね。これは前に友達が買って置いていった余り。自分では買わないよ」
彼の顔は赤らんでいて目もとろんとしている。すでに酔いが回っている様子だ。
普段は飲まないのに今夜は飲みたい気分なの? と聞きたいが、あえて聞かない。
濡れた髪にタオルを当て、酒を呷る彼の隣に座った。純が莉子の足元を一瞥する。風呂上がりの莉子の生足は、足首から太ももまでが惜しみなく純の前に晒されていた。
「ズボン履かなかったの?」
「大きすぎて落ちちゃうの。だからこれは返すね」
畳んだハーフパンツを純は怠慢な仕草で受け取り、無造作に床に放った。
「ごめん、ドライヤーないんだ」
「平気。ドライヤーなくても乾かせる」
「でも莉子ちゃんは髪長いからちゃんと乾かしてね。じゃないと風邪ひくよ」
「はーい」
莉子と純のやりとりはいつもと同じ。けれど、いつもと同じでも何かが違った。
ふたりの間に流れる危うい空気。それを感じ取っていたのは莉子だけではないだろう。
石鹸は子供の頃に嗅いだような懐かしい匂い。ゆるめのシャワーを浴びてさっぱりした莉子は純に借りた白色のTシャツを身につけた。男物のぶかぶかのTシャツは莉子の腰までをすっぽり覆い隠している。
共に借りたハーフパンツは履かなかった。Tシャツが大き過ぎてワンピース代わりになるし、ハーフパンツは履いてもずり落ちてしまうのだ。
洗面台の前でスキンケアを終え、脱いだ服と洗顔セットを抱えてキッチンと洋間を隔てる引き戸を開けた。
「シャワーありがとね」
「うん」
純はソファーに座ってぼんやりとしていた。彼の手には缶ビールがある。
「お酒、あまり飲まないんじゃなかった?」
「普段はね。これは前に友達が買って置いていった余り。自分では買わないよ」
彼の顔は赤らんでいて目もとろんとしている。すでに酔いが回っている様子だ。
普段は飲まないのに今夜は飲みたい気分なの? と聞きたいが、あえて聞かない。
濡れた髪にタオルを当て、酒を呷る彼の隣に座った。純が莉子の足元を一瞥する。風呂上がりの莉子の生足は、足首から太ももまでが惜しみなく純の前に晒されていた。
「ズボン履かなかったの?」
「大きすぎて落ちちゃうの。だからこれは返すね」
畳んだハーフパンツを純は怠慢な仕草で受け取り、無造作に床に放った。
「ごめん、ドライヤーないんだ」
「平気。ドライヤーなくても乾かせる」
「でも莉子ちゃんは髪長いからちゃんと乾かしてね。じゃないと風邪ひくよ」
「はーい」
莉子と純のやりとりはいつもと同じ。けれど、いつもと同じでも何かが違った。
ふたりの間に流れる危うい空気。それを感じ取っていたのは莉子だけではないだろう。

