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熱帯夜に溺れる
第3章 熱帯夜に溺れる
 指とは比べ物にならない質量のペニスを体内に迎え入れる行為は身体に異物を入れているのと同じ。だからこそ好きな相手としか性行為はしたくない。
 これは生理的な涙でもあるけれど、嬉し泣きの涙でもあった。

 前から後ろから体位を変えて何度も訪れる絶頂の波。ふたつの裸体が動くたびベッドは軋み、薄手の掛け布団は床めがけてずり落ちた。

「アッ、アンッ……ァ、ァアンッ! 純さんのおちんちん奥まで来て……気持ちいい」
「俺も……莉子のナカ……すごく良い……。たまらないよ」
「ンッ、ァン!」

 愛し合って溶け合ってひとつになる
 落ちて、溺れて、乱れて、溶けて、このまま消えてもいいと本気で思った。
 やっと純のものになれて、やっと純が莉子のものになった。

「莉子……愛してる……」

 余裕のない顔で言われた彼の囁きに愛しさが増す。
 ふたりは同時に、快楽の頂《いただき》に昇りつめた。

 絶頂を迎えた純の身体が崩れ落ちるように莉子の上に倒れてくる。耳元で聞こえる彼の荒い息遣いがいとおしい。
 汗ばんだ肌をぎゅっと寄せた男女はしばらく無言で抱き合っていた。

 シャワーを浴びて清潔な石鹸の匂いをさせていたはずのふたりの身体はじっとり湿っている。汗と唾液と体液と、すべてのものが肌の上で交ざり合った匂いだ。

「莉子。好き。愛してる」

 抱き合っている状態でそんな甘い言葉を囁かれると、とても照れる。途中までは意地悪だった彼はいつの間にか甘えん坊に変わっていて、莉子の胸元にすり寄っていた。

 今の純には年上の威厳がまるでない。多分、男はいくつになっても母親が恋しくて、いくつになっても甘えん坊だ。
 そこに男女の年齢差は関係がない。自分よりはるかに年下の女であっても男は理想の母親の一部を求めている。どんな男であっても。

 舌でペロペロと胸の突起を弄ぶ純は乳飲み子同然で、莉子は彼の柔らかな髪を慈しみを込めて撫でた。
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