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熱帯夜に溺れる
第4章 酔芙蓉の吐息
 8月最後の土曜日は久々に井上康介と勤務が重なった。大学4年の夏は卒業に向けて色々と忙しい時期らしく、8月はほとんど井上はシフトに入らなかった。

「佐々木さんは三連休の土曜は休みなんだね」

 バックヤードから戻ってきた井上は真っ先に作業場にいる莉子の隣に陣取った。バックヤードのボードには文具フロアに勤める全員分の9月の勤務日程が貼り出されている。
 今年は9月18日の土曜日から20日の月曜日までが三連休となり、莉子は18日の土曜を休みにしてもらった。

「はい。お休みをいただいています」
「連休どこか行くの? まさか彼氏と旅行?」
「違いますよ。半分は就活のためです。もう半分は離れて暮らしている親に会いに、実家へ行くんです」

 井上に告げた話は真っ赤な嘘だ。馬鹿正直に三連休の真の日程を話す必要はない。
 彼氏がいるかどうか探ろうとする井上の詮索をさりげなくかわした。

 三連休は純と初めての旅行に出掛ける。まさに井上の予想通りだった。
 莉子が彼氏と旅行に行ったとしても、誰もその相手が竹倉純だとは思わない。18日の土曜に休みを申請したのは莉子だけだ。

 莉子と純が同じ日に休みを取れば、シフトのスケジュール管理をする主任を含めた文具フロア従業者の全員に関係を勘付かれる恐れがある。
 加えて土曜に出勤している人間がふたりも休んでしまうと、勤務に入る他のメンバーに負担がかかる。誰かが休めば、誰かの負担が増える、それが社会の構造だ。

 相談の末に三連休の土曜日は純だけが通常通りの勤務をこなし、彼の仕事終わりに駅前で待ち合わせとなった。
 純には無理をさせてしまうが、こうでもしないと周囲に交際を隠しながらの旅行は不可能に近い。
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