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熱帯夜に溺れる
第4章 酔芙蓉の吐息
 仕事中であっても止まらない井上の私語にも、一向に列が途切れないレジ待ちの客にも、純にレジのヘルプを頼みたくても万年筆選びに夢中で純を解放してくれない男性客にも、今日は特にイライラする。

(お客さんにまで苛つくのはダメだよね……。ん? なんだろうあの人……)

 接客の合間、莉子は商品棚の間の人影に気が付いた。人影の正体は女性だ。
 目視で確認できる範囲の年の頃は20代後半以上、茶髪のボブヘアはゆるくパーマがかかっているみたいだ。
 女性客はじっとこちらを見ていた。……いいや、違う。

(あの視線の先はレジじゃなくて万年筆売り場?)

 初老の男性客の連れだろうか。年齢を考えると夫婦ではなく男性の娘か、息子に嫁いできた嫁……、と考えたところで16歳差恋愛をしている莉子と純のような恋人が世の中に数人いてもおかしくはないと思い至る。

(でも恋人でも娘でも、離れたところで待ってるっていうのは……普通は一緒に商品を選ばない?)

 女性客が万年筆選びに夢中な男性客の連れではなかった場合の、もうひとつの可能性を莉子はわざと考えないようにしていた。
 女性客の視線の先の相手が竹倉純であった可能性を。

 不審な女性客はあの後すぐに去ってしまった。万年筆を購入した初老男性の隣には、孫と思われる子供と手を繋いだ婦人が寄り添って、3人で仲睦まじく笑っていた。

 女性客は初老男性の年の離れた恋人でも娘でもなかった。では何故、女性はあの数分間、万年筆売り場だけに視線を注いでいたのか?
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