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熱帯夜に溺れる
第4章 酔芙蓉の吐息

手持ち無沙汰にベンチの周りをふらふらと歩き回っていた彼女は、「莉子」と名を呼ばれて振り向いた。ソフトクリームを両手に持った純がこちらに近付いてくる。
「はい、莉子の分」
「ありがとうっ。すっごい、綺麗なピンク色!」
純の片手から莉子の片手に移ったソフトクリームは薄紅色をしたバラのソフトクリーム。ローズウォーターとバラの花びらで作られたフラワーパークの名物スイーツだ。
莉子の赤い舌先が冷たいソフトクリームの表面を撫でた。
「うん、薔薇《バラ》の味!」
「ははっ。そのままの感想だな」
「私に食レポは期待しないでくださーい。純さんのは何味?」
「ロイヤルミルクティーって書いてあった。食べる?」
まだ純が口をつける前に、莉子は純のソフトクリームを口に含んだ。もぐもぐと味を楽しんだ彼女は笑顔で告げる。
「うん、ロイヤルなミルクティー!」
「だから感想そのままだなぁ」
「純さんにもバラのソフトクリームあげるね」
ふたりは笑い合って互いのソフトクリームを少しずつ分けながら、園内を彩る秋の花々を鑑賞する。
「コスモスって莉子に似てるよね」
「え?」
「コスモスは嵐に強いんだ。たおやかで儚そうに見えて、芯は強い。楽しい時間に嫌なことを思い出させて悪いけど、あの荒木さんにキツイ態度を取られても、莉子って平然としてるよね。初めて出会った日から、メンタルが強い子だなと思ったんだ」
繋いだ手から伝わる熱がほのかに強まった。両側をコキアに挟まれた通路を歩くふたりは、中央に女神像がそびえる噴水の前で立ち止まる。
「私、全然メンタル強くないのに……。だけどそんな風に言ってもらえると、なんだか恥ずかしいし照れる」
「莉子、顔が赤いよ」
「純さんもほっぺがちょっと赤い。照れちゃって可愛い!」
「こらこら、オジサンをからかうなよ。……あの花は何だろう? ふわっとしたピンク色の花」
不意に純が莉子の後ろを指さした。噴水の庭園を囲むようにふわふわとした桃色の花を咲かせた樹木が植わっている。
莉子達の地元では見かけない花だ。莉子も純も初めて目にする。
「はい、莉子の分」
「ありがとうっ。すっごい、綺麗なピンク色!」
純の片手から莉子の片手に移ったソフトクリームは薄紅色をしたバラのソフトクリーム。ローズウォーターとバラの花びらで作られたフラワーパークの名物スイーツだ。
莉子の赤い舌先が冷たいソフトクリームの表面を撫でた。
「うん、薔薇《バラ》の味!」
「ははっ。そのままの感想だな」
「私に食レポは期待しないでくださーい。純さんのは何味?」
「ロイヤルミルクティーって書いてあった。食べる?」
まだ純が口をつける前に、莉子は純のソフトクリームを口に含んだ。もぐもぐと味を楽しんだ彼女は笑顔で告げる。
「うん、ロイヤルなミルクティー!」
「だから感想そのままだなぁ」
「純さんにもバラのソフトクリームあげるね」
ふたりは笑い合って互いのソフトクリームを少しずつ分けながら、園内を彩る秋の花々を鑑賞する。
「コスモスって莉子に似てるよね」
「え?」
「コスモスは嵐に強いんだ。たおやかで儚そうに見えて、芯は強い。楽しい時間に嫌なことを思い出させて悪いけど、あの荒木さんにキツイ態度を取られても、莉子って平然としてるよね。初めて出会った日から、メンタルが強い子だなと思ったんだ」
繋いだ手から伝わる熱がほのかに強まった。両側をコキアに挟まれた通路を歩くふたりは、中央に女神像がそびえる噴水の前で立ち止まる。
「私、全然メンタル強くないのに……。だけどそんな風に言ってもらえると、なんだか恥ずかしいし照れる」
「莉子、顔が赤いよ」
「純さんもほっぺがちょっと赤い。照れちゃって可愛い!」
「こらこら、オジサンをからかうなよ。……あの花は何だろう? ふわっとしたピンク色の花」
不意に純が莉子の後ろを指さした。噴水の庭園を囲むようにふわふわとした桃色の花を咲かせた樹木が植わっている。
莉子達の地元では見かけない花だ。莉子も純も初めて目にする。

