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熱帯夜に溺れる
第4章 酔芙蓉の吐息
 莉子は初対面の謎の花に近付いた。木の高さは莉子の身長よりも少し高いが、ちょうど目線と同じ位置に沢山の花が咲いていた。
 側のボードに書かれた説明文を彼女は純にも聞こえるように朗読する。

「名前は酔芙蓉《スイフヨウ》、別名は木芙蓉《モクフヨウ》。芙蓉《フヨウ》の仲間で、原産国は中国、台湾。〈花弁は朝は純白、気温が高くなると花弁は徐々にピンク色に変化して夕方から夜には紅色に変わります。同じ花が時間帯によって白、ピンク、赤と移り変わる様子がお酒に酔った姿に似ていることから酔芙蓉と名付けられました〉だって」

 花弁が赤く染まるのは花に含まれるアントシアニンの成分が原因でもあると最後の一文に綴られていた。

「気温が25度以上にならないと花弁は赤くならないとも書いてあるよ。お酒飲むと身体が火照っちゃうし、お花も酔っ払っちゃうんだね」
「夜には赤くなるならさっきの莉子みたいに真っ赤な花になるのかな」
「もう! 純さんが恥ずかしいこと言うからでしょぉ?」

 咲き乱れる桃色の酔芙蓉の影に隠れて、笑顔の恋人達は誰にも見られないようにひっそり唇を重ねる。

 ボードの説明文には酔芙蓉の花言葉も添えられていた。酔芙蓉の花言葉は芙蓉と同じく「しとやかな恋人」。
 他にもいくつか芙蓉と酔芙蓉は同じ花言葉を持っている。

 けれど酔芙蓉には芙蓉にはない独自の花言葉がひとつある。おそらくフラワーパークの管理者も、ここを訪れる夫婦や恋人達に配慮して説明文にこの花言葉の記載を避けたのだろう。

 酔芙蓉だけの花言葉は「心変わり」。
 花の色が白からピンクに変化していく姿に由来する。紫陽花の花言葉である「移り気」と似たようなものだ。

 莉子も純も心の底から互いを愛しく想っていた。明日も明後日も、この恋を続けられると信じて疑わなかった。
 ねぇ、だから、心変わりをしたのは一体どちらだったのかな?
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