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熱帯夜に溺れる
第4章 酔芙蓉の吐息
 莉子のショーツのラインに沿って這わせた唇が一点を強く吸い上げる。吸ったそこには真新しい赤い花弁が咲いていた。

「キスマークだけつけていくのは酷い! お返しじゃなくて仕返しじゃんっ!」
「夕飯の間、ずっと莉子がうずうずしてるかと思うと愉《たの》しみだな」

 下半身の他はどこにも触れないまま純は莉子のスカートを綺麗に整えてやる。中途半端にキスマークだけを植え付けられた莉子は頬を赤らめて純をねめつけた。

「純さんのイジワルゥー、えっちー、変態ー、オジサンー!」
「いやだから、他はいいけどオジサンだけはちょっと傷付く……」
「えー、他はいいのっ?」

 低能な会話を続けるうちに、再びイタズラ心に火がついた莉子が純のベルトとジーンズのファスナーを外してしまう。
 戸惑う純に構わず、布団に押し倒した彼の下半身に莉子の顔が近付いた。

「莉子まずいって。そろそろ夕飯の時間……。それに風呂もまだ……」
「純さんだってお風呂入っていない時でも平気な顔して私のことベロベロ舐め回すじゃない」
「舐め回すって……」

 身も蓋もない言い方に、純は反論もできない。莉子が純のペニスの先端を唾液で満たした口内に迎えてしまえば、抗《あらが》えない欲の渦に純は簡単に引きずりこまれた。

「ッ……、ハァ……莉子……」
「んっ……純さんのおちんちん美味しいね」
「バカ。そんなこと言うと……出したくなるだろ……」

 ジュポジュポ……チュウ……チュパ……、莉子が純を愛する音と純が莉子に愛されて発するうめき声が同時に響く。
 束の間の甘ったるい時間を味わう彼らは夕食のことなどすっかり頭から抜け落ちていた。

 トントンと、扉の方から控えめなノックと夕食を運んできたと告げる仲居の声が聞こえた。
 ああもう、だから言わんこっちゃないと、純は額に手を当て項垂《うなだ》れる。ニヤリと笑う莉子の隣で彼は大慌てでパンツとジーンズを身に着けた。
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