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熱帯夜に溺れる
第4章 酔芙蓉の吐息
「でも地元を離れるのは嫌なんだよねぇ。お母さん達が今住んでる所ってここよりも田舎だし……美容業界の就職先なんかないんじゃないかなぁ」

 学生ではなくなっても、単身者用マンションの家賃をそのまま支払い続けてくれるほど、母と義父は莉子に甘くない。
 奨学金を抱えた身でのフリーター、ましてや独り暮らしをさせるわけにはいかないと考える母と義父は、充分に莉子の将来を案じてくれているのだ。

 とりあえず家賃の心配をしなくてもいい実家で、ゆっくり就職先を考えてみるのもいいだろうと言うのが親の考えなのだが、親がいる街がここよりも田舎となれば美容系の就職先には不安しかない。

 嘆く莉子の隣で知咲はあることを思い出した。

「そういえば、松川七菜《まつかわ なな》は東京のサロンだっけ。東京の大手ネイルサロン内定! って玄関の掲示板に貼り出しまでされて、凄い特別扱いだよね」
「七菜ちゃんはまぁね、特別扱いも納得だよ。あの子の技術は実際凄いもん。東京のネイルサロンに内定貰った話聞いても、私とは次元が違いすぎるから嫉妬も湧かない」

 莉子と同じネイルコース在籍の松川七菜は校内開催のネイルアートコンテストで優勝している。ネイルコースの教師も太鼓判を押す、我が校期待の星だ。
 ちなみに同じネイルアートコンテストで莉子の成績は参加人数54人中の21位だった。下位でも上位でもない中途半端な位置である。

 ネイルコースの秀才である七菜とは友人と呼べるほど親しくはないが、隣の席になれば話はするしネイルに関して莉子がわからないことは親切に教えてくれる。
 普通に良い同級生だった。

「東京は行けなくても名古屋や大阪に出る選択肢もあるんじゃない? 都会ならネイルサロンの数だけは多いよ」
「それはそうなんだけどね……」
「莉子が地元離れたくないのって、本屋の彼氏が理由でしょ」
「……うん。だって私が地元出ちゃうと遠恋になるじゃない。遠距離で続けられるか自信ない」

 名古屋や大阪なら莉子を雇ってくれるネイルサロンは確かにあるかもしれない。けれど通勤となると地元に住みながらでは難しい。
 莉子が名古屋や大阪に引っ越せば、地元書店の正社員である純とは遠距離恋愛となる。
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