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木の実を集めて君にあげる
第3章 再会したけど片想いは続く
3月の初めに、待ちに待った機会がやってきた。


幼稚園の同窓会をすることになって、
その実行委員会をPTAの子供がやる話が出た。

僕達が習っていた先生が、
園長先生になることが決まったから、
それのお祝いを兼ねてと、
成人する歳になるタイミングで一度集まりましょうという話になったらしい。


「子供達はそれぞれ、
集まって話を進めることになったから、
瑞樹ちゃんママにあなたの携帯、教えても良いかしら?」と言った。


僕は殊更つまらなそうに、
「別に良いよ」と言って、
さっさと部屋に入って、
「やった!!」と小さくガッツポーズをした。


そして、
携帯を握り締めながら祈るような気持ちで待った。


この時ほど、時間の進み方が遅く感じたことはなかったかもしれない。




携帯のバイブが震えた瞬間、
ビクンと心臓が震えて、
携帯を落としそうになった。

慌てて握り締めて、
番号を眺めてから深呼吸をして携帯に出た。



「あの…ご無沙汰しております。
幼稚園でご一緒しておりました…」


小さいけどしっかりした口調と優しい声。
瑞樹ちゃんそのままだった。


僕は冷静になれ!
と心の中で自分に言い聞かせて、
努めてゆっくり話し始めた。


「ああ。
瑞樹ちゃん?
久し振りだね?」


これだけ言っただけで、
もう吐きそうになる。
なんか、心臓が口から出てきそうなほどだったから、
その後、何を話していたのかも覚えてない位だった。


それなのに、もう1人の僕は、
エラク快活で爽やかに話し続けていた。


「瑞樹ちゃん、引っ越しちゃったから、
全然会えなかったよね?」

…でも、ピアノの発表会とか、
こっそり毎回行ってたよ。


「他のヤツとは、元町辺りで会ったりしたけど」

他のヤツなんて、どうでも良かったけど、
通り掛からないかなと思ってたし、
友達の友達とかが居て、
話題に出ないかなと思ってた。

咳喘息とかで引っ越しした後、
車で送り迎えってことも暫く知らなかったからな。


「逗子だよね?
住所、ショートメールで送って?」

〜いや、本当は母さん送ってたりしたから、
知ってるけどさ。
カーナビにもしっかり、登録してあるよ。

「箱入り娘だから、横浜までなんか出て来れないでしょ?」と言って、
翌日家に行く約束をしてしまった。


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