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雨の降る夜は傍にいて…
第3章 9月の雨(September Rain)
 14 出会い

 そもそも、このマスターと出会ったのは三年前のやはり、9月の冷たい雨がこうしてシトシトと降り続く夜であった…

 わたしはこの日の昼間に、大腸ガンステージⅡの診断を受け、ショックでフラフラと巷を彷徨っていた夜であったのだ。
 その約半年前から便に血が混じっているのに気付き、そして数年前に、父親をやはり大腸ガンで亡くしていたから、間違いなくわたしも恐らく大腸ガンであろうとは考えてはいたのであるが…恐かったのである。

 恐くて診察に行く勇気がなかなか出なかったのであった。
 そしてようやく半年の時間を掛けて勇気を出して検査をしたのだ。

『うーん、大腸ガンですね、少しリンパにも転移してるから急いで手術しないと…』
 その日、そう主治医に言われ、入院の手続きを済ませ、そして時間の経過と共に恐くなり、巷を彷徨っていたのであった。

 そんな9月の冷たい雨の降る夜に、偶然、この『バーウーッズ』に出会ったのである。
 ただ、この時は違う場所にあり、今の場所よりやや繁華街の中心寄りのメインに近い通り沿いにあった。
 その当時は白く光るネオン菅の看板が明るく輝いていて、わたしはなんとなくそのネオンの輝きに誘われたように店に入ったのであった。

「いらっしゃい…お好きな場所へ…」
 と、誰もいないカウンターに座る。

「お客さん初めてですよね…」
 わたしは黙って頷く。

「あれ、いや、ナンパじゃなくて、どっかで見た事が…」
 だが、この時のわたしには全く想い出せないでいたのであった。

 しかし、このマスターとの出会いは、今後のわたし自身にとっての、ある意味、運命の出会いでもあったのである…

「うーん、どこで…」
 マスターは必死に思い出そうとしていた。
 だが、この時のこんなやり取りに、この落ち込んでいたわたしにはどうでもよかったのであったのだ。

「ドライマティーニをください…」
 そんなマスターの様子を無視して、わたしはお酒を頼む。

「あっ、はい、お客様、一杯目から飛ばしますねぇ…」
 そんな言葉を呟いた時であった。

「あっ、思い出したっ…」
 マスターは、ハッとした顔をわたしに向けたのである。

「みっき…さん…
 ………だよね…」

 なぜ、わたしを知っているの…

 わたしをみっきと呼ぶ…

 バスケ関係者か…

 あなたは誰…





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