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雨の降る夜は傍にいて…
第3章 9月の雨(September Rain)
 18 マスター④

 その穏やかな受け答え、そして色々な博学的な知識、打てば響く太鼓のようにマスターのその言葉がわたしの心に染みてくるのである。

 マスターと相性がいいのかなぁ…

 なんかいつも、色々と話したくなるんだよなぁ…

 そんなマスターの雰囲気が、また、わたしの心を惹いてくるのであった。


「わたし、なんか入院中に思ったんですけど………」

 わたしのガンは…
『大腸ガンステージⅡ』
 であった、しかしそれは手術により経過観察は必要なのではあるが、治癒したといえたのだ。

 ただ、同じ病状で父親を亡くしていたせいなのか、入院中に凄く『死』というモノについて考え、意識したのである。
 そしてその『死』を身近に意識してしまい恐かったのだ。
 そんな時にこの差し入れの小説を読み、そんな本のストーリーの世界の中に集中して没頭し、いや、恐怖心からの逃避だったのかもしれないけれども、本を、小説を、読んでいる間だけはそれらの恐怖心とストレスを忘れる事が出来たのである。
 そして、更に、そんな物語が明日への希望へと通じていき、恐怖心が徐々に消えたのを切に感じたのであったのだ。

 そんな時、わたしは、ふと、思ったのである。

 わたしもこんな小説が書いてみたい…と。

 思い返せば、小さな頃から本を読むのが好きな子供であった、そして、いつもその本の世界に入り込み、夢見る少女であった時期があったのだ。
 そして作文も得意で、小学校時代は作文展荒らしでもあり
『全国児童作文コンクール』
 等に入選した事もあった位なのである。

「なんか、心の想い、慟哭を文字に表してみたいの…」
 と、わたしは素直にマスターに想いを告白した。

「いいんじゃないの…
 何も気にせずに、気楽に書けばいいんじゃないのかなぁ…
 このサイトなんかちょうどいいよ…
 ある程度、読者からの反響や、手応えも感じられるしさ……」
 と、マスターはそう云って勧めてくれたのである。

「俺もさ、大学生時代のなんか、そう、あの当時の心のモヤモヤや、欲求不満、青春の苛立ち等を、感じてさ、それを小説に書いてたまたま投稿しただけだったんだよ…」
 別に小説家になろうなんて考えた事もなかったんだけど、たまたま投稿して、たまたま新人賞に、入賞してしまったんだよ…
 と、少し遠くを見ながら話してくれる。





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