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雨の降る夜は傍にいて…
第3章 9月の雨(September Rain)
 29 マスター⑮

 そしてわたしは、なにより彼、豪さんのユーモアのセンスと、そのユーモアの裏から感じ、伝わってくる、彼の人生の生き方の

 余裕…

 ゆとり…

 男の生き様的なモノ…

 それらが一番お気に入りであり、好きだったのであったのだ。

 通い始めて一ヶ月の頃。
 その頃のわたしはマスター豪さんに心酔し始めてきており、様々な過去話しや、多彩、多才、多様な趣味等の話しを徒然に訊いていたのであった。

「ねぇ豪さん、なんでこのバーはウーッズって名前なの、何か意味があるの…」
 わたしは問うたのである。

 なんなんだろう…

 趣味、嗜好なのか…

ウーッズ…

 Wooods…

 英語では『木』の意味なんだが、oが1文字多い…

 なんなんだろう…

 趣味、嗜好なのか…


「簡単じゃんかぁ…
俺の名は大森……」

 大森…

 おおもり…

 大きな森…

 そして木…

 森は沢山の木… 

 ウッド…

 沢山の木、ウッズ…

 そして大森だから…

 oの一文字足して…

 ウーッズ…

 Wooodsなんさ…


「ねっ…」
 と、笑ってきたのだ。

「ええっ、マジ、そんななのぉ…」

「うん、マジ、そんななの…」
 
 このユーモアセンスにわたしはすっかりやられてしまったのである…

「そういえば、あまり帰ってる様子感じないけど…奥様は大丈夫なの…」
 少し気になっていたので思い切って訊いてみたのである。

「うーん、これかぁ…」
 そう呟いて左手を上げ、薬指のリングを見る。

「うん…」

「実はさぁ…
 もう、三年前に亡くなっちゃってんだよねぇ…」
 そう微笑しながら云ってきたのだ。

「えっ、あ、ごめんなさい…」

「いや、いいんだよ、もう平気だからさ…」
 それにこのリングは保険なんだよ、女遊びのさ…
 そう話してきたのである。
 のだが、これには本心は見えなかったし、わたしには読めなかったのであった。

 誰にだって触れられたくはない過去はあるのだ…

 わたしははそう思い、ここでその話しは止めたのであったのだ。

 たが、そんな彼の、マスターの、豪さんの言葉、表情に、男としての、彼の生き様的なモノを感じ、わたしは更に、彼に心酔し、信頼し、愛を感じ始めてきていたのである…






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