この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
雨の降る夜は傍にいて…
第3章 9月の雨(September Rain)
 31 マスター⑰

 そしてこの夜が、最後の夜となった…

 一ヶ月目…たまに電話をし、会話をした。
 『実はさ、工業団地誘致と、高速道路、そしてリニア新幹線絡みに絡んじゃってさぁ…』
 かなりの金額で売れると話していた。

 二カ月目…やはりたまに電話をし、会話を交わす。
『なんかさぁ、銀行が沢山押し寄せてきててさぁ、やれ貯金だの、仮想通貨だの、投資だのってさぁ…』
 でも、声も、会話のテンションも、普段通りの豪さんには変わりはなかった。

 三カ月目…三回目の月半ばの電話から、突然に、音信不通になった。
『お客様の電話番号は現在使われて……』
 と、冷静な音声ガイダンスが冷たくわたしの耳に流れてきたのだ。

 えっ、豪さん…

 そしてわたしは『バー ウーッズ』に行ってみる。

「あっ…」

 すると、お店の看板は外れており、看板の代わりに
「貸店舗」という札が夜風に揺られていたのであった。

 これで、豪さんとはお別れなのか…

 わたしはお店での豪さんの事しか知らなかったのだ、どこに家があるとか、お店以外の豪さんのプライベートな部分は全く知らないのである。


 わたしはその「貸店舗」の札をぼんやりと眺めながら、意外に、冷静に、そう思っていた。

 その夜は、真夏の台風の発生に伴う、風雨の夜であった…

 ああ、疼く…

 どうしよう…

 どうしたらこの疼きを鎮められるのか…


 そしてその夜から、雨の降る夜に彷徨う、わたしの迷走が始まったのである。
 
 とても、そう簡単には豪さんの代わり等、見つかる筈がない…

 そしてその迷走により、わたしは心の迷宮に迷い込み、彷徨い始めていくのであった。

 嵐の夜に…

 大きな低気圧の夜に…

 雨の降る夜に…

 傷痕と心が疼く夜に…

 わたしは彷徨い、男を漁る…

 だが…

 その後、二度と、再び、豪さんのような理想的な男には巡り会えなかったのである。

 そして…

 あの夜から三年が過ぎた、この前の台風第9号の余波の雨の夜であった…



 

/318ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ