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雨の降る夜は傍にいて…
第3章 9月の雨(September Rain)
 34 あれから… ①

 外は台風9号の余波の雨が降っていた。

 そんな夜に、再び豪さんと再会した、いや、偶然に見つけたのだ…

 そして豪さんは、わたしの隣に座り、ゆっくりと語りはじめたのである。

「そう、あれは………」

…相続した遺産の田畑、山、土地等を整理する為に山口県の実家跡に戻った。
 元々、同級生の市役所勤務の奴と、不動産屋をしていた二人から連絡を貰っていたからある程度は把握していたのだ。

 田畑は工業団地誘致の区画整理に丸被り…

 実家の家屋敷は高速道路用地に…

 そして山林は将来のリニア新幹線のルートに…

 不動産の同級生からは
『とてつもない金額になるぞ、仲介させろ…』
 
 そして市役所勤務の同級生からは
『相続税対策しないと…』
 少し前から云われていたのだ。

 二束三文だった遺産相続が総額10億円以上に化けたのである。

 まるで宝くじに当たったみたいだな…

 不思議なモノであった。
 若い時分は、お金が欲しくて仕方がなかった。

 いいクルマ…

 いい家…

 贅沢な暮らし…

 結婚当初、時代はバブル経済全盛期であり、世の中は浮かれきっていた。
 そして金が欲しくて、芸術系ではなく、建築家になったのだ。
 まだ最初はかろうじてバブルであったからよかった、だが、その後すぐにバブルは弾け建築家の仕事も激減した。

 世の中は未曾有の不景気に陥ったのである…
 そして時既に遅しであった。
 建築家の仕事を辞め、奥さんの実家のこの土地に奥さんの親の事業の後継者として来たのだ。
 そんな金の苦労を散々し、ようやくそんな思いから逃れ、人生にも達観し始めた頃に、急に奥さんが事故に巻き込まれて亡くなり、慰謝料や保険金等が相当額入り、それまで執着していたお金に対する煩悩が、すっかりと消えて無くなったのである。

 皮肉なモノであった。
 散々、苦労を共にしてきた奥さんが亡くなり、そのお陰で当面困らない程のお金が手に入ったのだ、そして今度は実家の相続した遺産が10億円以上に化けたのである。

 これが皮肉ではなくて何なのだろうか…

 そしてその頃の俺は完全に金銭的な欲望、煩悩は失くなっていた。

 だから相続した遺産の値上げ交渉もしないし、相続税対策等もせずに、さっさと終わらせようと整理をしていただけなのである…

 



 
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