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雨の降る夜は傍にいて…
第3章 9月の雨(September Rain)
 36 あれから…③

「す、すご…
 じゃあわたしの事なんか忘れちゃう訳だ」
 思わずそう呟いたのだ。

「あっ、ごめん、いや…
 でも…
 言い訳になっちゃうけど忘れた訳ではないよ…」
 と、言ってきた。

「嘘よ、じゃあ、なぜ、突然に電話が不通になったのよ…」
 わたしは決して怒って云った訳ではない、ただ、純粋に疑問を訊きたかったのである。

「実は…
 携帯電話を水没させてしまって…
 完全にデータが死んでしまったんだよ…」
 そうなると完全にお手上げになってしまったんだ、そしてなんか、そう、全部をリセットしたくなってさ…
 と、云ったのだ。

「水没か…」
 わたしはその話しに妙にリアリティを感じてしまい、そして納得してしまった。

 なぜならば、わたしも豪さんとはこの携帯電話の中の電話番号と、メールアドレスしか知らなかったのだ、いや、それしか繋がっていなかったのを、電話が不通になった時に痛切したのであるから。

 そうだよね…

 所詮、そんな関係だったんだもんね…

 そしてそれはわたしが望んでいた関係だもんね…

 そう、わたし達は所詮セフレだったのだ。
 それもわたしが望んだカタチのセフレだったのである。

 電話番号だけの…



「まだ、その時は山口県にいたし、その時点では帰ろうと思っていたからさ…」
 
 わたしは豪さんの言葉に、妙に、納得してしまっていたのだ。

 言い訳ではない…

 事実なのだ…

 そして、所詮、電話番号だけの繋がりのセフレな関係だったのだ…
 と、痛切していたのであった。

 あの時よく友達に云われていた、男女の付き合うという定義を否定したバチが当たったのだ…

 自業自得なのだ…

「じゃあ、豪さんは、わたしとのこうした三年振りの再会は望んでくれていたの…」

 わたしは一番の心の中のわだかまりの問い掛けをする…

「当たり前じゃないか…」

「でも、だったら、お金あるんだし、もっと繁華街の目立つ場所で…」
 わたしは至極最もな意見を云った。

「いや、出会いは…」
 人の出会いは偶然の積み重なりであり、必ずその出会いには意味があり、つまりは必然なのである…
 と、以前、初めて出会った夜に語られた言葉を云ってきたのである。

「だから、絶対に再会するってさ…」

 そう思って、信じて待ってたのさ…






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