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雨の降る夜は傍にいて…
第3章 9月の雨(September Rain)
 37 あれから…④

「だから、絶対に再会するってさ…
 ゆりさんが、必ず見つけてくれる…
   そう思って、信じて待ってたのさ…」
 わたしはそんなマスター、豪さんの言葉に心が震えていた。

「それに、俺は、このバー以外のゆりさんの事は、昔のバスケコーチ時代の事しか知らないから…
 待つしかなかったのさ…」
 
 確かにそうなのである、そしてそんな豪さんの言葉は、そっくりそのままわたしにも当てはまるのである…

 お互いさまじゃないか…

「こうしてみると、三年前のゆりさんとの出会いはやはり必然だったんだよ…」

 妙に納得してしまう…

「いつ…戻ってきたの……」

「うん、六月かな…梅雨時期…」
 
「そう…
 でもなんで戻ってきたの…
 お金たくさんあるわけだし、自由に、全国きままに渡り歩けるじゃないの…」

「うん、一つは……
 ここに、妻のお墓があるから…」

「うん…」

 それには納得できる…

「もう一つは…」
 そう豪さんは呟き、そしてわたしを見てくる。

 言うなっ…

 それは言うなっ…

 嬉しいけど、今訊いてしまったら…

 薄っぺらい言葉にしか聞こえない…

 そして…

 豪さんは黙って、タメて、息を飲み、まだわたしを見つめている。
 そしてわたしもそんな想いを込めながら、彼の目を見つめ返す。

 ああ、ダメだ…

 それは訊きたくない…

 もし…

 もし、訊いてしまったら一気に、この昂ぶっているわたしの想いが…

 醒めてしまう…

 せっかく…

 三年越しに再会できたのに…

 台無しになってしまう…

 すると豪さんは、黙ってカウンターの下から、ある何かを手に取り、テーブルの上に置いたのである。

「え……」

 それは近くにある、この駅前で一番大きなホテルの、カードキー、であった。

 カードキー…

「今は、ホテル住まいでさ…」


 その言葉で十分であった…

 わたしは黙って頷き、そのカードキーを手に取り、バーの外に出る。

 外は台風9号の余波で、雨が強く降り出してきていた…

 雨の降る夜は傍にいて…





 
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