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第4章 台風12号MUIFA（ムイファ）

　19　ワインバー　『バル　エンヤ』

　「わかった…戻ったら電話ちょうだい…」

　わたしは途方に暮れてしまう。

　どうしよう、どうしようか…

　仕方がない、よく行くワインバーにでも行くか…

　わたしは
『BarWooods　バーウーッズ』
　が復活する前によく通っていたワインバー
『バル　エンヤ』
　に、行く事にした。

　特別にワインは好きでも嫌いでもない、だが、あの香りと様々な種類の味の芳醇さは好きであった。
　そしてどちらかといったらカリフォルニアワインの軽さが好きなのである。
　更に細かくいえば、実は
『シャンパン』
『スパーリングワイン』が好きなのだ。

　そしてこの『バル　エンヤ』の、女性ソムリエの美優ちゃん、というおそらく20代半ばのスタッフの接客と、明るい笑顔が気に入ってよく通っていたのであった。

「いらっしゃいませ、あ、お久しぶりでーす」
　と、その美優ちゃんが明るく迎えてくれたのだ。

「どうぞ、カウンターへ」
　と、わたしはカウンターの端に座る。
　いつも空いていればこのカウンターの端が好きなのである。

「スパーリングワインの軽い目のやつがいいんだけど…」

「はい、かしこまりましたぁ、確か、ライト目がお好みなんでしたよね」
　わたしは頷く。

「あと、カマンベールチーズを…」
　
「はい、かしこまりましたぁ」
　と、美優ちゃんは明るく、可愛く返事をする。
　まだ、時間が早いせいか、店内は奥の席のひと組だけのみで、まだ空いていた。

「はい、どうぞ…
　クックスというシャルドネのスパーリングワインです…」

「ありがとう」
　わたしは一口飲んでみる。
　軽くて、ライトなキレのあるわたし好みの味であった。

「うん、美味しいわ」

「ありがとうございます、よかったぁ…
　ごゆっくりどうぞぉ…」
　そして少し柔らか目のカマンベールチーズと合わせて、一人ワインを愉しんでいく。

　わたしは決してお酒は強くはない、こうした雰囲気が好きなのである。
　そしてこんな疼く夜には一人でこうして紛らわすしか方法がないのであった。

　ああ、10時までかなり長い、待てるかしら…