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第4章 台風12号MUIFA（ムイファ）

　20　再会…

　ああ、10時までかなり長いわ、待てるかしら…

　マスターは早くて10時過ぎだと言っていたのだ、まだ、先はかなり長い。

　大丈夫かなぁ…
　と、不安な気持ちと、そして台風のせいの不安定な昂ぶりを感じながら、そう考えていた。

　多分、保ちそうもないかも…
　不安な想いが湧いてきていたのだ。


「あれっ…」
　不意に、後ろから声がする。

「えっ…」
　わたしはその声に振り返り、ドキッとしてしまう。

「あっ…」


「おっ、ゆ、ゆり…か、ゆりなのか…」
　そこには懐かしい顔があったのだ。

「えっ、あっ、こ、浩司なの…」

　そこに、遡ること12年前に付き合った男が立っていたのであった…

　その男は、大塚浩司…

　そして年齢差が20歳以上ある…

　今から12年前に３年間付き合った元彼である。

　今までで一番大好きな男であり、わたしに色々な意味でも、一番影響を与えた男でもあったのだ。

　そして、彼とは不倫の関係であった…

「ゆりかぁ、久しぶりだなぁ、10年振りくらいになるのか…」

「うん…
　多分、９年振りくらいかも…」

「そうかぁ、９年かぁ…
　でも、ゆり、変わらないなぁ…」

「えっ、そうかなぁ…
　でもぉ…浩司、アナタも変わってないみたい…」

「いや、すっかりオジさんだよ…」
　
　いや、その爽やかな笑顔、その笑い皺、そしてその白い歯、全く歳を感じないわ…

　昔のままよ…

「一人なのか…」

「うん…」
　わたしは頷く。
　そして一瞬、彼の目がわたしの左手をチェックしたようにも感じられたのだ。

　一人なのか…

　それは一人で来店なのか…

　まだ、独身なのか…
　この、二つの意味が込められていたようであった。

　うん、そう、わたしはご覧の通り、まだ独身よ…

　まだ一人で、こうしてフラフラと彷徨っているのよ…