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第4章 台風12号MUIFA（ムイファ）

　21　別れの理由

　最愛の元彼…

　大塚浩司…

　彼は色々な意味でも最愛、最高な元彼といえたのである。

　遡ること12年前、彼とは不倫関係であった…

　当時の彼は、バーや飲食店を数軒経営していた経営者であった。
　そしてその頃のわたしは某私立高校で、教師兼名門女子バスケットボール部の監督であった。
　そんな時代であったのだ。

　あるきっかけがあって約３年間付き合いを始めた。
　だが、その３年間の付き合いの間に、彼の中学生になる娘が全日本アンダー15に選ばれ、そして全国でも有数な、有名なバスケットプレイヤーに成長したのである。
　そして、県内の他のライバル高校との獲得合戦が始まってしまったのだ。　　　
　しかし、何の因果なのか、その娘さん、美香というのだが、その美香が現役時代のわたしの事を知っていて、いや、知ってしまっていたというべきであろうか、それが理由でわたしの高校に入りたいという流れになってしまったのであった。

　これには嬉しい悲鳴であったのだ。
　いや、本音は本当に複雑な心境であった。

　だって、不倫関係の彼氏の娘なのだから…

　そして、当時の県内ナンバーワン、そして全国トップレベルの中学生バスケットボールプレイヤーなのだから…

　県内の三つのバスケットボール部に力を入れている私立高校と、県外の全国でも有名な二つの私立高校、計五高校での獲得合戦になったのだ。
　だが、しかし、本人がわたしに憧れ、わたしの元でバスケットボールがしたいと言ってきたのである。

　断る理由は全くない、かなりの大歓迎、有難い事であった…

　しかも彼女、美香が入学するならば、と、やはり同級生の他の県選抜選手の有力選手四名もワンセットで入学する、という素晴らしい流れになったのであった。
　そしてこれは間違いなく、わたしの監督指導にとっても黄金時代の幕開けとなることは、誰がみても明確でなのである。

　あとの問題は、わたし個人のプライベートな事だけであった…
　まさか、選手の、生徒の親と変わらずに不倫関係を続ける訳にはいかなかった。
　そしてわたしと彼とは泣く泣く別れたのである。

　だが、彼は色々な意味で、その３年間の付き合いの中でわたしに最も影響を与えた男でもあった…

　そして、大好きな、忘れられない男の一人でもあったのだ…