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雨の降る夜は傍にいて…
第5章 秋冷え…
 14 経営者

 彼は当時、その言葉通りにほぼ夜は、あのスポーツバーに居たのである。

 だからわたしの逢いたい夜には、いつでも逢えたのだ…

 ただ、あの12年前の当時の彼は45歳前後、男としてエネルギッシュであり、野心家であった。
 このスポーツバーの他に、居酒屋と、ステーキハウスの2軒を経営していたのである。
 居酒屋は完全に信頼できる店長に任せており、ステーキハウスもまた順調に安定して流行っていたらしい。
 そしてこのスポーツバーが、まだオープンして三ヶ月、ようやく軌道に乗り始めてきたという処であったようである。

 彼は基本的に飲食店経営を軸に、以前はインターネットカフェやら、色々と事業をしていたらしいのだが、紆余曲折を経て現在のカタチに落ち着き、安定したそうだ。

『暫くは余計な店とかは出さない、この三軒で行くんだ…』
 と、わたしには云っていた。
 そしてそういう経営者であるから、地元の商工会や、青年会議所等にも付き合いで参加をしていたのだ、だが
『俺はさぁ、つるむのが嫌いでさぁ…』
 と、あくまで最低限の付き合いしかしていないらしい。

 そんな感じだったので、今はこのスポーツバーに力を入れており、ほぼいつもここにいた。
 そしてたまたま居ない時でも、居酒屋かステーキハウスにいるようだし、必ず携帯電話には出るのである。
 だから、本当にあの言葉通りに、いつでも、わたしの好きな時に逢える、という理想的なカタチの男であったのだ。

 そしてそんな感じなので、本当に結婚してる事なんて信じられない感じではあったのだ。
 だが、決して不倫の関係を忘れる事はなかった。

 それにもう一つ問題があったのだ、いや、問題なのかどうか…

 彼は物凄く女性にモテるのだ、そして、また、すぐにヤッちゃうのである、いや、らしいのだ。
 直接、直に見たり、訊いたりした事はないのであるが、付き合いが進み、この店のスタッフ等や、常連のお客様等と仲良くなった辺りで、その噂や、気配をチラホラと感じる様になってきたのである。

 そしてわたしとの関係が結ばれる直前まで、女が、彼女がいたようであったのだ。

 それも三人ほど…





 
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