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雨の降る夜は傍にいて…
第5章 秋冷え…
 17 娘…大塚美香

「今日は大変お世話になりましてありがとうございます…
 娘、美香も美紀谷先生に直接ご指導受けて喜んでいまして…」

 大塚美香…

 今日のクリニック交流会の参加した選手の中でピカイチの抜群の逸材であった選手である。

 わたしの現役時代と同じガードポジション…
 そして同じ左利き…
 スピード、キレ、抜群のバスケセンス…
 素晴らしい逸材といえた。

 あまりにもわたしの現役時代に似ていたので、つい、夢中になって教えてしまったのである。

 同じ様なプレイスタイルの特徴と、そして弱点…

 まるでわたし自身の中学時代を見ているようであったのだ…
 だから無意識にも、ついつい夢中になって教えてしまったのだった。

 二歩目でトップスピードに入るステップを…

 左利き特有の有利さと、そのスピードを生かし、自覚した上での小さなフェイントと、カットインや、ステップイン、そしてドライブシュート…

 ガードポジションとしての意味と意義、そしてゲームメイクのポイント等…
 
 それらをクリニック交流会というのを忘れてしまい、ついつい個人的に夢中になって指導してしまったのである。


「本人も凄く勉強になったって、喜んでおりました…」
 奥様はそう云ってきたのだ。

 わたしは目の前にいる美しい女性が彼、浩司の奥様であること…

 そして、あの素晴らしい逸材が娘であること…

 これらの判明した事実に、強烈に、衝撃を、ショックを受けていたのである。

 なんてことなんだ…

 あの素晴らしい逸材の選手が、彼の娘であった…

 この目の前にいる美しい女性が彼の奥様であると…

 ショックと衝撃で目眩がしてきていた。

 なんてことなんだ…

 こんな事があるのか…


「なんか、ウチの店長に訊いたらよく来店して下さっているみたいで…」
 ありがとうございます…
 と、いかにもオーナー夫人然として頭を下げてくる。

 ドキドキドキドキ…

 ザワザワザワ…

 胸が高鳴り、昂ぶり、騒ついてきていた。

 浩司の奥様と娘って…

 なんて運命の悪戯なんだ…

 こんな事ってあるんだ…

 不思議な想いが湧き起こってきていたのである。
 





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