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雨の降る夜は傍にいて…
第1章 台風の夜
 20 最終テスト

 ピンポン…
 ドアの呼び鈴を鳴らす。

 ガチャリ…
 スッとドアが開き、洗い髪がまだやや濡れている美しい彼女の顔が覗いてきた。

 ああ、やはり、いい女じゃないか…
 思わず胸が昂ぶってくる。

 165センチ位であろうか…
 スレンダーなカラダがバスローブを纏っており、シャワーの後を物語ってくる。

 どちらかといえば、ややキツめなスッとしたキツネ顔…
 そして薄い唇、そしてその唇のやや左斜め下に小さな点状のホクロがある。

 うん、このホクロ、さっきは気付かなかったな…
 だが、このホクロがなぜか彼女の妖艶な美しさを演出しているようにも感じられた。

 彼女はドアを開け、一瞬にして私を一瞥したようにも感じられた。

 まだ、安心は出来ないのか…

 まだ私は試されているようだ…

 これはまだまだ油断はできない、慎重にいかなくては…


「どうぞ…」
 そして彼女はそう呟き、くるりと踵を返し、私に背を向ける。
 だが、そんな彼女の後ろ姿に私は無意識に、本当に無意識に抱きしめてしまったのだ。

「あっ…」
 しかし、そんな彼女の軽い喘ぎに、その行為の嫌悪感を感じはしなかった。

 大丈夫だ、いつものように、丁寧に…

 そして優しく、ソフトにいこう…

 好みというモノは、いや、セックスの好みは実に多様で、多彩で、十人十色で、人それぞれである…
 と、わたしはこの40年の経験で痛感している。
 そして何より一番大切な事は、このお互い何も知らない、いきなりの、ワンナイトの場合は特に、入り方が重要なのは十分に理解しているつもりなのである。

 本当に過去を振り返ると人それぞれであった…
 人によってはいきなりハードな、強引な展開を好む女性は多々いた。
 なぜならば、いきなりハードで強引な展開の方が女性側としては自分自身に対して言い訳が付くからなのであろう。

 断りきれなかったのだ…と。

 だが、この今の、目の前の彼女は違うのだ、いや、違う筈なのである。

 なぜならば、今夜、この展開は彼女の方からの誘いだといえるからなのであるから…

 彼女の方から誘ってはきていたのだが、知的な言葉のやり取り等の彼女なりの試しのテストがあっての今の展開なのである。

 だから、まだ、安心は出来ない…

 多分、この入り方が最終テストなのだ…



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