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雨の降る夜は傍にいて…
第1章 台風の夜
 21 重要な清潔感

 多分、この入り方が最終テストなのだ…

 私はそう想いながらも必死に本能の欲求を押さえつつ、後ろ姿の彼女の洗い髪がまだ湿っているうなじ辺りに顔を寄せていく。
 彼女のうなじ辺りからはシャワーしたてのボディーソープの心地よい香りが漂ってきていた。

 やはり、思い切って急ぎシャワーを浴びてきて良かった…
 ワンナイトラブではとにかく清潔感が大切で半分以上の比重を占める、いや、殆どといっていい位に重要なのである。

 そして決して急ぎ、胸をまさぐったりはしない…
 あくまでもソフトに、スムーズに…なのである。

 またこの段階では言葉等は要らないのである。

 まだ二人には言葉も、名前も要らないのだ、詮索などは要らないのである…
 その証拠に彼女はひと言も発してはいなかった。
 そしてそれは私を受け入れてくれているという証でもあるはずなのだ。
 ヘタな言葉、会話はややもすると彼女の昂ぶりをいきなり興醒めさせてしまう可能性があるからなのである。


「…………」

 よし、入念に歯も磨いてきた、少し攻めて様子を見るか…

 そして見知らぬ同士でのワンナイトラブには、キスを嫌がるというありがちな展開もあるのだ。
 私は恐る恐る、試しにゆっくりと彼女の顔を横に向け、唇を寄せていく。

 おっ、目を閉じている…

 大丈夫か…

 大丈夫だろうか…

 まずは軽く、フレンチに唇を寄せる。
 そして引く。
 それで彼女の反応を試みる。

「あっ…」
 すると彼女はこのフレンチさに、思わず反応をして、吐息を漏らしたのだ。
 そしてその吐息により、一瞬、唇が開いたのである。

 その一瞬のスキを私は逃さなかった…






 
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