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雨の降る夜は傍にいて…
第5章 秋冷え…
 71 青天の霹靂

 もしも美香ちゃんがわたしの高校に入学するならば
『ジュニアオールスター大会』
 においてベスト4の成績を治めている、そのベストメンバー5人全員も一緒に入学したい、と、奥様が云ってきたのである。

「ええっ」
 わたしは驚きの声を上げてしまう。

「そうなんですよ…
 なんか子供達で話し合ったらしく…」
 と、奥様はニコニコしながらそう話してきたのだ。

「そ、そんな、まさか…」
 そうなのだ、そんな、まさか、なのである。

「なんか三年位前に新潟県の新設の私立高校が同じ様に県選抜メンバー全員を集めて、常勝チームを作ったそうなんですけど…
 ま、今回は子供達が美紀谷先生を選んだっていうか…」

 わたしは一気にドキドキしてきていた…

 だってこれは、このお話しは、これからのわたしの最強の、常勝伝説の始まりでもあると…
 こんな馬鹿なわたしでも解る事なのであるからだ。

「あ…、あのぉ…奥様は…」
 それでいいのか…と、言葉に出せなかった。

 しかし、わたしの思いが通じたようで…
「はい、私は賛成です…」
 と、奥様はそう言い、そして、隣に座っている今は美香ちゃんの父親然とした浩司も頷いてきたのだ。

 ドキドキドキドキ…

 ワクワクワクワク…

 正に青天の霹靂とはこの事であった。

 三年掛けて、ようやく全国の扉を開けられた。
 そして、これから新入学予定の有力な中学三年生をスカウティングするつもりではあったのだが…
 向こうから入学してくれると云うのである。

 正に青天の霹靂、夢の様である…

 だが、責任は重い、来春からは結果を出して当たり前、という事になるのである。

 そして、全日本の有力な宝ともいえる存在の美香ちゃんをちゃんと、より強く、立派に、そして全日本ナンバーワンへと育てなくてはならない…

 いくら馬鹿なわたしでもその意味は良く判るし、プレッシャーがギンギンと掛かってきていた。

「美紀谷先生、どうですか…」
 奥様はニコニコしながら、そう問うてきた。
 だが、心なしか目が笑っていないような感じにも見えるのだ。

 それは当たり前の事である、大切な、一人娘、それも全国でも有力なプレイヤーである娘を預けると云うのであるから、そんないつもみたいな和やかな笑みだけでは済まないからであった…

 責任重大である…




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