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雨の降る夜は傍にいて…
第5章 秋冷え…
 72 黒幕…

「あ、大変光栄で嬉しいお話しです…が、
 ただ全く予想できていなかったし、安藤先生がそんなわたし推しまでしてくれるって思っていなかったから…」
 わたしは戸惑っていた。

「じゃあ安藤先生に電話してみたらどうかしら…
 実は今夜の件を私が相談しまして、電話を待っている筈なんですよ…」

「えっそうなんですか」
 すると奥様はにこやかに頷く。

 ああ、そうなのか…

 今回の美香ちゃん進学問題の黒幕は元全日本アンダー15ヘッドコーチであり、現在のこの県での中学バスケット全体の総合監修ヘッドコーチである安藤先生なのか…

「今…ですか?」

「はい…」
 奥様は笑ってはいるのだが、その目はわたしに有無を云わさない目力があった。
 そしてわたしは安藤先生に電話を掛ける。

「もしもし美紀谷です…」

『おう、みっき、か…』
 わたしの元バスケット関係者の殆どは皆、わたしの事を『みっき』と呼ぶ。

 そのわたしの呼び方で、付き合いの長さが判る位なのである…

「実は今、大塚美香ちゃんのご両親と会っていまして…」

『ああ、あの進学問題の件だな…』
 少し安藤先生はトボケていた。

「はい…、なんか先生がわたしを推してくれてるって…」
 そしてわたしは、自分の昔のアンダー15時代当時に、安藤先生から全国常勝レベルの高校に進学を勧められた話しをして、今回の疑問を問うてみたのだ。

『あぁ、そうか…』
 すると安藤先生は話しを始めてきた…

 …あの昔の当時の考え方は、今だに基本的には変わってはいないよ。
 だけど、ケースバイケースの問題もあって、今回の大塚美香の場合に限りは、お前、みっきがずばり適してるって俺は考えたんだよ…

「そうなんですか…」

『ああ、正に適材適所だと思っている…』
 …だって大塚美香は、彼女のプレイスタイルは、昔のみっきにそっくりじゃないか、それも長所も短所も、いいところも足りないところもさ…

「あ、はい…」

 確かにそうではあった…
 そして、それに彼女は、昔のわたしのプレイ動画まで検索し、真似、研究している、とまで云っていたのだ…

『彼女の足りないところ…
 物足りないところ…
 みっきお前が大学で怪我するまでに自分なりに努力をし、練習して身に付けてきた技術の事だからよおく自分でわかるな…』

 それはわかる…




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