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雨の降る夜は傍にいて…
第5章 秋冷え…
 73 懐かしい言葉

『彼女の足りないところ…
 物足りないところ…
 みっきお前が大学で怪我するまでに自分なりに努力をし、練習して身に付けてきた技術の事だからよおく自分でわかるな…』

 もちろんよくわかっている…

「は、はい…
 それは、よくわかります…」

『だからさ…』
 …確かに大塚美香は素晴らしいセンスだ、だが、まだまだだ、そしてみっきに憧れているって云う位だから昔のお前にそっくりだ、だが、まだ、そっくりなままなんだよ…
 
『まだ、真似のレベルなんだよ…
 オリジナルではないんだよ…』
 
 さすがは安藤先生であった…

 先生の言いたい事、言っている意味がよくわかる…

 今の美香ちゃん、彼女の歩んでいる道はわたしとほぼ同じ道なのである。

 だが、まだ当時のわたしには少しだけ及ばない…

 だけど、同じ道を歩んできたわたしだからこそ、今、第三者的視線で過去の自分と冷静に見比べ、比較でき、当時に思い悩んだ事、ぶつかった壁、それの対処方法、練習方法等々が手に取る様に分かるし、アドバイス、指導ができるのだ。

 そしてそのわたしのアシストによって彼女は更にレベルアップし、飛躍できる筈なのである…

 そして必ずわたし以上のプレイヤーになれる、いや、大塚美香というわたしのコピーではないオリジナルプレイヤーに成長させてみたい…のだ。


「あっ…」
 
 そういう事なのか…

『そうだよ、そういう事だよ…』
 …それに彼女が進学決めたら、他の県選メンバー全員が入学したいって云ってるんだろう、正に漁夫の利じゃないか、そしてそれによりみっき、お前も更に、共に成長でき、飛躍できるんじゃないのか…

 正に青天の霹靂からの漁夫の利であり、一石二鳥といえるのである。

「せ、先生…」

『俺は大塚美香の更なる成長と飛躍も見たいが、みっきお前の、美紀谷悠里の指導者としての飛躍と成長も見たいんだよ…』

「あ、ありがとうございます…」
 わたしは思わず、涙がこみ上げてきてしまっていた…

『迷うな、決断しろ…』

 ああ、これは…

 この言葉は…

 あのわたしの全日本アンダー15時代に、ガードとしてピンチの時に先生に言われた言葉だ…

 わたしは懐かしさと、安藤先生の優しさと愛を感じて、涙を溢してしまった。

 迷うな、決断しろ…






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