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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 13 浩司の目

「ふうぅぅ…」
 浩司は激しい射精による絶頂感の吐息を漏らし、ぐったりと仰向けになっていく。

「凄い、沢山でたわ…」
 わたしは彼の熱い想いの象徴である精子をティッシュに戻し、その量の多さを呟いた。

「……そうか…」
 そう苦笑いしながら呟いてくる。
 そしてわたしを抱き寄せ、唇を近づけてきた。

「あっ、ダメよ、まだ、口の中に…」
 わたしは思わずそう囁くと
「構わないよ…」
 そう言いながらキスをしてくる。

 ああ、こうじぃ…
 わたしはその彼の優しいキスに心が蕩ける様であった。

「…ゆ、ゆり…」
 そのキスはセックスの直後なのに珍しく熱く、激しい。
 まるで始まりのキスの様に舌を貪り、甘い唾を啜ってくる。

 ああ、ダメ、また感じてきちゃう…

 そうウズウズと再び疼きを感じてきて、思わず目を開く…と。
 浩司がキスをしながらわたしを見つめていたのに気付いた。

 えっ、な、なに…

 いつもキスを交わしている時の彼は目を閉じているのに…

 そして、その目に、なんとなく違和感を感じたのである。

 な、なに?…

 わたしはその違和感に、フッと唇を離す。

「あ…」
 すると彼はなんとなく気まずそうな吐息を漏らす。

 ザワザワザワザワ…

 えっ、なに、なにかあるの?…

 昂ぶりの疼きは胸の騒めきへと変わっていく。

「えっ…」
 そんな疑問が漏れてしまった。

 この目は…

 浩司のこの目は…

 なにかある…

 違和感が不安へと変わっていく…

「ふうぅぅ…」
 すると彼はわたしのその疑問の不惑の目を感じたのだろう、ため息を漏らし、そしてベッドサイドのタバコを1本取り、火を点けた。

 タバコの煙の匂いが部屋に広がっていく。

 わたしはタバコは吸わないが、この煙の匂いは嫌いではない。

 ややファザコン気味なわたしには、このタバコの匂いに父親を想起させるのである…

「ふうぅぅ…」
 そして彼はタバコの煙を吐き、わたしの顔を見る。

 ザワザワザワザワ…

 胸の騒めきが高鳴ってきた…








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