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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 25 別れの夜 ②

 浩司から近寄ってくるか、わたしがお店に行かない限り…

 2度と…

 2度と会えない…

 顔も見れない、のだろうか…


 いや、浩司に限ってそんな中途半端な、未練たらしくはしない筈なのだ…

 だから恐らく、完全な別れとなってしまう筈である…

 いや、完全な別れとなる…

 それがはっきりと分かったのである。

 な、なんていうことなんだ…

 わたしはその判明した事実に愕然とする、いや、改めてその愕然とした想いに打ち拉がれてしまっていた。
 そして心の中に、虚無感と焦燥感が強く渦巻いてきていたのである。

 東京から、ウインターカップ、そして合宿の帰途中のバスに揺られ、ぼんやりと窓の外の流れる風景を見ながら、わたしは考えていたのだ。

 そして無事に帰途に着き、解散し、家路に着いたら、わたし達は、いよいよ別れの夜を迎えてしまうのである…


 いやだ…

 イヤだ…

 嫌だ…

 やっぱり…

 やっぱり、別れたくない…

 あの浩司の…

 笑顔…

 声…

 匂い…

 感触…

 優しさ…

 聡明さ…

 そして男として、いや、大人の男、人間としての大きさ…を、失いたくは、無くしたくはない。

 浩司の存在感の大きさを改めて認識してしまい、わたしの心は激しく動揺し、ザワザワと騒めいてきていた。
 そしてますますと増してくる焦燥感に、心が震え始めてきていたのてある。

 このまま、永久に到着しなければ良いのに…
 そんな子供じみた想いが昂ぶってきていた。

 だが…

 しかし…

 無情にも、生徒達を乗せたバスは学校へと無事に到着してしまったのである。


「せいれーつ」
 3年生のキャプテンが、気丈に最後の声を掛けてきた。
 そうである、今日学校に到着して、この解散を持って3年生達は正式に引退なのである。
 そしてわたしが、この3年生達にとっての最後の挨拶をしなくてはならないのだ。

 ダメよ、ダメ…

 しっかりしなくては…

 わたしはこの生徒達の前では、女である前に教師、指導者、つまり『師』なのである。

 そしてこの3年生達とお別れなのだ…






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