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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 26 別れの夜 ③

 この3年生達は、わたしがこの母校である高校に春に赴任した時の新入生なのであった。
 そしてわたしの指導者としての成長と共にあった、いわゆる運命共同体ともいえる生徒達であったのだ。
 共に挫折からスタートをし、共に苦悩し、共に努力をして、今に至っているのである。
 だから、特に、この3年生達への思い入れはひとしおなのだ。

 ダメよ、ダメ、ちゃんとしっかりしなくては…

 わたしは1本の大きな大木なのだ、そしてこの生徒達はそんなわたしの枝に必死にしがみ付き、共に成長をし、立派に花を咲かせたのである。

 終わり良ければ…なのだ。


「えー……
 終わり良ければ…全て良し…
 正にこの言葉がピッタリな………」
 わたしはここで込み上がってきた涙と嗚咽を堪える為に、言葉が詰まってしまったのだ。

 それは、話しを始めた途端に、不安たっぷりだったこの高校の臨時採用教師と、バスケット顧問に赴任した当時が、そう、まるで走馬灯の様に脳裏に浮かび上がり、ぐるぐると巡り出してしまったからである。

 最初の1年半は勝てなかった、全部決勝で負けてしまっていた…
 それも皆、1点差から4点差以内での敗北という、モロに指導者の責任であるという負け方であったのだ。

 だが、それでも、誰もわたしを責めてはこなかった、いや、更に、ますますわたしを信じて付いてきてくれたのである…

 指導者冥利に尽きたのだ…
 そして、その信頼が結果、今の、この成績を収めるに至ったのである。

 それを想い返した時に、涙が込み上げ、必死に嗚咽を堪えて、とても言葉を発する事が出来ないでいたのだ。
 3年生達、いや、生徒達ほぼ全員が涙を流していた。

 皆の想いも一緒、一つなのであろう…

「終わり良ければ全て良し…」
 この三年間は正にこの言葉に尽きるのである。

 そしてわたしはこの後必死に涙と嗚咽を堪えながら、いや、涙にぐしょぐしょになり、嗚咽に喘ぎながら別れの言葉を紡いでいったのだ。


「美紀谷先生、今まで本当にありがとうございましたぁ…」
 
 最後にキャプテンも、涙を溢れさせ、嗚咽しながら必死にそう返して解散した。

 『終わり良ければ全て良し…』

 わたしは今夜、浩司とも最後の夜を迎えるのである…
 
 そして全ての想いを断ち切り、終わらせなければならないのだ…



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