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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 27 別れの夜 ④

「こんばんは…」
 わたしは学校で解散後に一人で浩司のお店である
 スポーツバー『B.B CAFE』を訪れた。

「ゆり先生、おかえり…」
 浩司が迎えてくれた。
 彼の顔を見るのは約1ヶ月半振りである。

 わたし達は一瞬、見つめ合う…

 そして彼の深い色々な想いの色の目を見て、わたしは思わず涙がこみ上げてきてしまい泣きそうになってしまっていたのだ。
 そんなわたしを彼は察知したのであろう、すかさずカウンターのわたしのいつもの席に案内をしてくれ、声を掛けてきた。

「残念だったなぁ、でも、来年への手応えがあったんじゃないのか?…」
 わたしは黙って頷いた。
 どうやらインターネットで試合を見てくれていたそうである。

「相手が悪かったな、でも来年期待できるじゃないか」
 確かに、今回の3回戦の相手が悪かったともいえた、なぜなら、その相手は第1シードの3年連続優勝している日本一といっていい高校であり、結果、4年連続優勝を決めたのであるから。
 そんな強豪高校チーム相手に、わたし達の高校チームは前半リードをし、最終的に5点差で負けたのだ。
 そして今大会を振り返るとその強豪高校を1番苦しめた高校と評価されたのである。

「うん、そうね…来年ね…」
 そう呟いた。

「うん…」

「あ、ドライマティーニを…」

「ああ…」
 彼は意味深な目で頷いた。

 ドライマティーニ…

 このカクテルこそが、わたしと浩司を繋いだきっかけのお酒なのである。 
 わたしが2年半前のインターハイ決勝戦で負けてしまい、ヤケ酒を飲もうと偶然このスポーツバーを訪れ、そして酔い潰れ、彼に介抱してもらい、二人の関係のきっかけとなったのだ。

 最後の夜にふさわしいカクテルである…

「ご馳走さま…」
 わたしはそんなカクテルであるドライマティーニをほぼ一気にに飲み、席を立つ。
 
「帰るのか…」

「うん…」

 待ってるわ…

 わたしは、そう目で語る。

 すると彼は黙って頷いた。

 最後の夜への、最後の誘いであった…

 だが、年末の夜なのである、スポーツバーはかなり賑やかで忙しそうであるのだ。
 そして彼の目も、
 忙しいから、少し遅くなる…
 そう語り掛けてきた。

「うん…」
 
 分かっているわ、待ってる…

 わたしは頷きながら、店を出た。




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