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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 37 別れの夜 ⑭

 わたしは浩司の目を見てハッとする、そして想いが思い浮かんできたのである。

 そうなのだ…

 浩司は…

 浩司は、わたし以上に苦しんで…

 苦しんで…

 苦しみぬいて…

 今夜、ここに…

 来たんだ…

 苦しみは、わたし以上…

 いや、わたしの比では無い…筈なのだ。


 わたしは、浩司と別れても…

 バスケット指導者という、そして、恐らくは明るい未来が来るであろう、先が待っている…

 なぜならば、この別れはそんな未来との引き換えなのだから…

 だが…

 しかし…

 しかし浩司にはわたしと別れて何が残るのか…

 3年前、わたしと付き合うから、ちゃんと付き合いたいからと言ってくれて、当時いた3人の彼女達と別れてくれたのだ。
 その位に浩司はわたしに対してちゃんと向き合ってくれ、ちゃんと、真剣に、愛してくれた、いや、愛してくれている。

 そして今回の別れの理由…

 わたしは得るモノ、残るモノがあるが、果たして浩司はどうなのだろうか?…

 わたしとの3年間に、わたし以外の女の影や、匂いは全く感じられなかった、そしてわたしの事を心底愛してくれている…と、間違いなく実感できる。

 すると…

 浩司には何も無い、いや、残らないのか?…

 奥様との愛…

 いや、わたしの知る上ではそれはあり得ない、なぜならば、夫婦関係は、一人娘の美香ちゃんがいるから表面上継続しているだけの筈なのだ。

 美香ちゃんに対しての父親としての愛情か…

 いや、それも、それは以前からある、そしてその愛情からのわたし達の別れなのであるから。

 3軒の経営する店か…

 それはわたしとの関係以前から存在している。

 後は…

 後は…

 わたしと別れてから、また、再び彼女を作るしかない…

 つまりは、何も残らない…

 失くなってしまう…

 彼女を作るしかない…のか。

 浩司はステキだ、そして当然モテる、女、彼女なんて、わたしと別れて直ぐに出来る。


 イヤ…

 それは…

 イヤだ…

 違う女、彼女…

 イヤだ…






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