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甘い蜜は今日もどこかで
第4章 【届かない想い】
「離れたくないな……」
頭上から聴こえてきたセリフに切なさを募らせる。
周りはパレードで盛り上がっている中、向かい合った私たちは。
「また来ようね」
約束の指切りげんまんしたら優しく笑ってくれて「ハグしたい」と言うリクエストにはすぐに応えてあげる。
私からギュッと抱きついた。
ぎこちないけど背中に回してくれた手と騒がしくても耳に届く心臓の音。
凄くドキドキしてくれている。
もうそれだけで満足。
ありがとう、勇気出して言ってくれて。
「アキって小さい」
「ゆずくんが大きいんだよ、物足りない?」
「ううん、可愛いから困ってる」
顔を上げたらうんと近いね。
残念ながらキスは出来ないけど、頬に触れたり軽く抓ったりしてイチャイチャは出来る。
「なんか、ポリスの姿だから悪いことしてるみたい」
「俺も……思ってた以上にドキドキするね」
クルッと前に向き「ギュッてして」と再びバックハグでパレードを最後の方まで楽しんだ。
着替え終わって帰りの電車に乗り込んだ時、座席に座った瞬間から肩を抱かれ寄り添ってきた。
「まだ魔法解けてないよね?」
「うん、大丈夫」
ホッとしたのか私の頭を撫でて自分の肩に乗せさせる。
私の方に向いて脚を組み、空いてる手は指を絡める。
「ゆずくん」と呼べばこっちを見るだろう。
一番近い距離で改めて言うね。
「お誕生日おめでとう」
見つめ合ったまま言葉にならない様子だから続けて言うよ。
「ゆずくんのこと独り占めしちゃった、大切な日に一緒に過ごせて嬉しかったよ、生まれてきてくれてありがとう」
そう言ったら更にギュッと抱き締められて「ありがとう」って噛み締めて言ってくれた。
本当は言わなきゃいけないのかな。
夢を与えた後に辛いのはやっぱり嫌だから極力言いたくないな。
もうレンタル彼女はやめるってこと。
吉原さんにはもうしないって言ってある。
元々最初から受けないでって言ってたし、恩を返す為に仕方なく受けていたけど。
「これが最後です」と今回お受けした。
本当は前の回で終わりにしたかったけど、今日の誕生日に予約したいって言われて自ら引き受けた。