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甘い蜜は今日もどこかで
第6章 【キミの隣に居たい】
いつもの秘書スタイルに変身し、リップを塗る前に私から踵を上げてキスをする。
ジロウもスーツに身を包みマネージャーの顔になっていたけど、唇を重ね合わせたらいつに増して色っぽい視線を送ってくる。
「ちゃんと話すから、私が選んだのはジロウだからね?信じてて」
「はい、ちゃんと戻ってきてくださいね」
「あ、もう敬語……」
「仕事モードなんで」
ねぇ、その顔ドキドキするよ。
いつもと変わらないジロウに戻っただけなのに、つい昨日のジロウが蘇ってくる。
私だけが知ってるもう一つの顔って感じ。
「んふ、どっちのジロウも好き」
「待って、それは照れます…」
腰に手を当てて“待った”をかける仕草に笑った。
ヒールを履いていざ、出発……なんだけど。
スーツジャケットの裾をクイクイと引っ張る私は、少しだけ目線が高くなったことを良いことに最大の上目遣いで弄んであげる。
まだ照れてる、可愛い。
背中を擦ってくれながら「どうしたの?」って顔を近付けてくる。
「ねぇ、此処出たら次会えるの9時間後だよ?ジロウは我慢出来るの?」
「えっ……あ……いや、椿さん、もう仕事モード入ってるのかなって、お強請りして断られたらちょっと悲しいなってなるから僕めちゃくちゃ我慢してたのに」
「まだリップ塗ってないんだ」
「うぅ、それ反則っす」
クルリと体勢変わって壁側に立たされ優しいキスが降ってきた。
朝だから遠慮してる?
舌の入れ具合で本気度が伝わったみたいでジロウも本気出してきた。
「こ、これ以上はマズいっす」
「うん、今日一日、何度も今のキス思い出して?私も思い出すから」
「はい、ヤバくない程度に浸っておきます」
「ヤバいのは、帰ってからね?」
耳元でそう囁いてドアを開ける。
顔を覆いながら出て来るジロウ。
一緒に部屋から出て鍵閉めて、また帰って来る生活ってだけで何でこんなに幸せなの?
満たされるってヤバいね。
駐車場まで一緒に行くつもり。
手を繋ぎたいのは我慢。
まだ公に出来ない関係だし。
いつも通り、朝に迎えに来てくれた感じで。
顔はニヤけてるかもだけど秘書モードになりつつあった。
清々しい朝、エントランスを抜けて行く。