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甘い蜜は今日もどこかで
第7章 【愛したい守りたい】
「おはようございます、副社長」
ホテルのロビーで落ち合い、二日酔いかと思いきやスッキリした顔で私たちの前に現れた。
「昨日はすまなかった、部屋まで運んでもらって……大口契約だったからつい頭が飛んでしまった、所々記憶はないが失礼な事をしてしまっていたなら本当にすまない」
先に謝られてしまった。
すかさず前に出たジロウも頭を下げる。
「こちらこそ、失礼な態度を取ってしまい申し訳ありません」
大まかに…だけど昨日の様子を話さざるを得なかった。
クライアント相手だし、記憶がないなら説明する義務がある。
言葉の綾だとしてもバカ正直に嘘偽りなくお伝えしなければ。
「来てくれたのがキミで良かった」と副社長は漏らした。
ジロウ目線でお伝えした報告に何度も謝られ恐縮する。
そして、最後には私に。
「その時が来たらまた改めて話そう」
「………わかりました」
軌道修正してきた!?
あくまで長期戦に持ち込んで来たのか。
副社長なりに答えが出たのだろう。
押して駄目なら引いてみる作戦だろうか。
どちらにしてもはっきり断らなければならない状況は同じ。
「昨日もお伝えしましたが…」
「わかってる、でも今は本当に藤堂さんが必要なんだ」
ジロウの言葉に被せてくるなんて、やっぱりこの2人はバチバチやり合うらしい。
「また僕が止めに入る事のないようにお願い致します」
「わかった」
ジロウもジロウで、自分も規約違反してるから大きく言えないっていうね。
でも私はその長期戦にはお応え出来ない旨をこの場で話さなければ、と思った。
「副社長、これからも秘書としてお仕え致します、改めてお話する時も今の気持ちは変わる事はないと思います、それだけ理解して頂ければいつどんな時でもUNEEDの一員として100%お助けしますね」
忘れないように何度も釘を打つ。
自分の為に。
ジロウの為に。
その度に副社長を傷付けてしまうのは今後も避けて通れないだろう。
でももう、期待させるのは終わりだ。
「わかってる……理解出来るように努める……だから、これからも俺の尻叩いてくれよな?」
無理に笑わせてしまった。
申し訳なく思う。
本当、何が正解か分からない。