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甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】





精神安定剤で譫言が増えてる。
一時的なものだから、と言っていた。
吉原さんとも会えて穏やかな顔つきの日もあった。
仕事の話を嬉しそうに話してる。
お母様やお姉さんも来てたみたい。
特にお姉さんとよく話したって教えてくれた。




お姉さんは看護師さんだから、きっとジロウをひと目見て大丈夫だと言ってくれたんだね。
“私の病院でももっと重症者は居るし、傷が治るに従って普通になるよ、全然心配ないよ”と言ってたって聞いた時は思わず泣き崩れた。
心の底から良かったと思った。




皮膚移植は出来るだけ自分のを使うみたいだけど広範囲だから断言は出来ないけど、跡が残るのは避けれないけれどもくっきりと残ってしまうわけではないとのこと。




ジロウも「早く元気になりたい」って意欲出てきてるし、痛みはまだまだあるけど今日より明日、明日より明後日…と元気な身体に近付いていこうね。




「椿さん、毎日ありがとう」って言わなくて良いよ。
私はジロウの顔を見て、安心して1日が終わるんだよ。
だから余計な心配はしなくて良いの。




常時、痛みがあるのは見てても辛そう。
でも看護師さんが言ってたよ。
痛みがあるのは傷口が生きている証、痛みを感じているのは治っていってる証拠なんだって。




皮膚移植は救急センターで行う訳では無いので転院しなければならない。
設備の整った大きな病院を紹介された。
移植してリハビリ受けて、早ければ1ヶ月も経たないうちに退院出来るみたい。
退院後は更に1ヶ月間、通院しながら自宅療養して完治。




転院する前日。
まさかジロウがボロ泣きするとは思わなかった。
「ふぇーん」って泣くから私もつられて泣きそうになったよ。
でもグッと堪えた。
もうジロウの前では泣きたくなかったから。




「遠くなる……寂しい」と言ってくれてありがとう。
転院先は今より遠くの病院になってもしかしたら毎日は通えなくなるかも知れない。
仕事が始まれば定時であがれても面会時間越えちゃうかも。
電話が出来るようになれば電話で終わる日もあるし、週末だけになっちゃうね。




こんな子供みたいに泣くジロウが愛おしく思えた。
「凄く支えられた」って言うけど、それは私もだよ。
ちなみにこれからも全力で支えていくよ。









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