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甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】





「彼女とかそういう話、してくれないもんねぇ」ってお母様からも。
急に咳払いしてジロウも座り直す。




「うん、ちゃんとした形で紹介したかったんだけど、こんなことになる前に一度話した僕の大事な人です、ずっと僕の片想いだったけどようやくお付き合い出来た矢先だったわけで、紹介するの遅れてごめん、椿もごめんね」




私も座り直してペコリと頭を下げた。




「これからもジロウくんを支えていきたいと思います、どうぞ宜しくお願いします」




「あらあら、結婚の挨拶!?」




「あ、いや、それはまた改めて!椿のご両親ともお会い出来てないし、僕も今はこんなだからもう少し先になるかもなんだけど」




「ふふふ、こっちは大賛成よ、椿さん、バカでドジな息子だけどこちらこそ宜しくね」とお母様に言われて目頭が熱くなる。
「泣かないで」と横からティッシュを渡され笑いながら泣いてしまった。
もうジロウの前では泣かないって決めてたのにこの有り様。
こんなの、泣かない方が無理だよ。
認めてもらえたことが何より嬉しい。




「私もこんな可愛い義妹なら嬉しい!」とお姉さんも泣かせてくる。
「ていうか、絶対手放すな、こんな良い子他に居ないからね」とまで。
それを聞いたジロウはとびきり優しい笑顔で「うん」と答えていた。




私、やっぱりジロウの顔が好きだな。
優しく笑うの。
目尻にシワが出来て胸がキュンとなる。
優しさが滲み出てるんだよね。
だからその顔、ずっと見ていたいって思うの。
相当な欲張りだから覚悟してて。




ようやくお泊りの日。
背中に保湿クリームを塗る時に初めてちゃんと傷を見た。
正直、絶句するほどで(うわ…)と思ってしまった。
この時の気持ちを今も思い出しただけで泣けてきちゃう。




本当に頑張ったんだね。
痛かったよね。
前より痩せてるし、クリームを塗る前に本当は抱き締めたかった。
私の想像を遥かに越える痛みと闘っていたんだね。




パッと見、例えるとしたなら、昔、教科書で見たような世界地図のよう。
それが肩から背中に広がってる。
それを言ったら
「え、僕、世界背負ってる!?」って聞いてくるから笑った。
しっかり塗ってあげるね。









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