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甘い蜜は今日もどこかで
第4章 【届かない想い】
「どのくらい飲まれてるんですか?かなり酔ってます?」
__まだボトルの半分くらいだよ
「え、でも副社長、ロックですよね?」
__うん……あのさ、今だけで良いからその“副社長”ってやめない?仕事してる気がする……ハハハ
「あ………すみません、えっと……」
__下の名前で呼んでよ、昨日みたいに
えっ………昨日って。
すぐに脚にキスマークつけられた時のことを思い出しちゃって心拍数が上がる。
ルームウェアのシャツワンピースの裾から確認しちゃったし。
確かにまだ紅くついている。
「え、ちょっと緊張しちゃいますね、えっと……裕典さん…?」
__うん、やっぱりそっちの方がグッとくる……電話だと耳元で言われてるみたいだ
ちょっとちょっと、変な空気になってませんか…?
愚痴大会だったはずでは?
__俺も呼んで良い?下の名前で……今だけだから
そう言われてダメです、とは言い辛い。
「はい」と答えたら凄く間を溜めて耳元で聞こえてきた。
__椿………
初めて呼び捨てにされてドクン…とまた飛び跳ねた。
周りで私をこう呼ぶ人は居ないから。
「はい………やっぱり照れますね」
__でも、新鮮じゃない?電話で…だけだけど、距離が近付いた感じがして……凄く嬉しいし、恥ずかしいし、幸せだよ……もっともっと、キミのことが知りたくなる……お願いだから、まだ切らないで?
「はい……」
まるで隣に居るかのような息遣いが聞こえてくる。
電話だと少し声に曇りが生じるけど、副社長の声はいつもよりセクシーだ。
どんな結婚式だったの、とか聞かれて当たり障りない程度に答えて他愛もない話を気付けば2時間近くも話していた。
もうすぐ日付けが変わる。
__こんな時間までごめん、すっかり話し込んじゃって
「いえ、何か不思議な感覚です、会社の上司とこんな長く普通は話せないですもん、裕典さんが聞き上手なんで私こそ色々喋り過ぎましたね」
__いや、楽しかった、椿の声は安心して聞いてられる、不思議と落ち着くんだ、よく眠れそうだよ