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呪われた王宮~宿命を負う聖少女の物語
第60章 祈り2(アズート)
「私はアズートと申す旅の僧侶です」
その男は、やんわりとマチルダの思いを否定した。

だがその声の優しい響きは、確かに心の中にしまっておいたものと同じではあった。
それでも記憶の中の僧侶と今も年恰好も同じという事は、計算が合わない。

ジューム国の事も知らないという。
マチルダはそれ以上詮索するのをやめて、王と共に司教となったアズートに神のしもべとして仕える事にしたのだった。

新しく建てた聖堂に響くアズート司教の説教は、マチルダを暖かく包んでくれた。
そしてそれ以上に、何かむず痒い感情で身体が火照るのも否定出来なかった。

司教を見つめているだけで熱い想いが込み上げてくる。
不敬な想いに戸惑うマチルダは一心に祈るのだった。

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