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ベターハーフは何処にいる
第3章 いきなりの失恋と喪失
駐車場について、
豪ちゃんは助手席のドアを開けて押さえてくれる。

結い上げた髪が当たらないようにと、
ドアの上の処を、手でカバーしてくれるのも、
豪ちゃんの優しい処だった。


ふと前方を見ると、
親の借り物みたいな白いBMWのセダンが停まっていて、
運転席に座る翔子さんが、
助手席の森田くんに覆い被さるようにキスをしてるのが見えてしまった。


私の視線でそれに気付いた豪ちゃんが、
「おーおー。
やるなぁ。
翔子ちゃん、凄い積極的だからな」と苦笑いする。

「えっ?」

「ほら、紹介された日にさ。
酔っちゃったから歩けないって言うから、
俺の部屋に連れて行ったのよ。
そしたら、俺のこと、押し倒して、
ベロチューしてくるし、
ベルト外してくるしさ」

「はっ?」

「でも、俺、全然勃たなくて。
そしたら、役立たず!って罵倒されたよ?
女の子から、そんなことするなって言って、
愛ちゃんなら、そんなことしないって言ったら、
怒りまくって帰って行ったよ」


私は下を向いて紅くなってしまう。


「そしたら、あいつ、
狙いを俺から森田にしたんだろうな?
なんかさ、
俺があいつに、愛ちゃんの話ばかりするとか、
上手くいかなくて…とか、相談するフリして近づいて、
酔っ払って帰れないっていう例の手を使って…。
酒に強い森田も酔っ払ってたって話だから、
一服、盛られたんじゃないの?
朝起きたら裸で寝てたらしいよ。
森田、真面目だからさ。
それで付き合うことにしたらしい。
なんか、この話、聞かされた時、
愛ちゃんを頼むって言われたけど?
なんかあったの?」


私はただ、
首を横に振ることしか出来なかった。


翔子さん、酷い。
私の森田くんへの想いを知ってたのに。
でも、女の友情なんてそんなものかもしれないと思って、
浅はかにも豪ちゃんと翔子さんをくっつけて、
自分が森田くんとなんて考えたのがいけなかったんだと反省した。


策士策に溺れるとは、
このことかもしれない。



こうして、
私はあっさり失恋してしまった。


なんてことはない。


何も始まらなかっただけで、
最初から単なる友達だったってことだと思うようにした。
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