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ベターハーフは何処にいる
第3章 いきなりの失恋と喪失
こうして、豪ちゃんと私はその日から、
挿入はしないけど、
時々イチャイチャするような仲になった。

どちらかといえば、
私が一方的に気持ち良くして貰うような関係。

でも、恋愛というより、
私への慈愛と癒しのような感じもした。


私からは正直、
何かしてあげたくても、
「良いよ。
そんなことしなくて」と言われてしまうような関係。


きっと、これは、
お互いに本当につきあう相手が出来たら終わる関係なんだろうなと思った。


私に酷いことをした相手のことは、
名前だけ豪ちゃんに言った。

その時、
豪ちゃんが左の眉毛を上げたから、
何か隠してるのは判ったけど、
とにかく忘れてしまいたかった私は、
それ以上、何かを追求することはなかったし、
あの、樹っていうヒトと会うことは二度とないだろうと思ってた。



司法修習生が終わって、
私は父の事務所の一番ペーペーの雇われ弁護士になった。

豪ちゃんは大学院に上がって、
森田くんは入った弁護士事務所の勧めもあって、
アメリカのロースクールに入学することが決まったと、
豪ちゃんから聴いた。


3人で壮行会でもしようと言って、
あのいつものバーに集まった。


「今度は勝手に俺を置いて帰らないでね?」と笑う豪ちゃんと、
また、3人でテキーラを乾杯しながら呑んで行った。


「翔子ちゃんは、アメリカにはついて来てくれなくてさ。
卒業するまで遠距離かな?」と、
少し淋しそうに森田くんは笑った。


私はグッと涙を堪えながら、
何でもないような顔で言った。

「ベンジャミンはどうするの?」


「えっ?」


「お部屋にあったベンジャミン…」


「ああ。
どうしようかな?
実家は植物、育てるの苦手みたいだしな」


「私が養子にもらってあげようか?
立派に育てるよ?」と言うと
少しはにかんだ顔で笑った。


「じゃあ、明日、俺の車で引き取りに行こうか?」と豪ちゃんが言って、
「うんうん。
そうしよう!」と私が笑って、

「ベンジャミンにっ!」と言いながらその日最後の乾杯をした。
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