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非モテ革命軍
第2章 夜襲部隊
「ぐはっ……!」

黒崎はベッドサイドの床に崩れ落ち、苦悶の呻き声を上げた。

指揮官の視線は床の男を素通りし、恐怖で身を縮こまらせているベッドの上へと正確に向けられた。

微動だにせず、ただ銃口の気配に怯える女。

指揮官は黒い迷彩の奥にある冷酷な瞳を細め、狙い定めた獲物を射抜くように、その名を告げた。

「朝比奈佳代だな」

佳代が血の気を引かせた顔でわずかに頷くと、指揮官は口元に伸びるインターコムのマイクに向かって、抑揚のない声で告げた。

「――目標発見。確保する」

その言葉が、部屋の空気を一変させた。

兵士たちの動きが、歯車のように正確になる。

床を踏み鳴らす無機質な軍靴の響きが、かすかにベッドの脚を震わせていた。

一人が佳代の腕を掴み、もう一人が無言で彼女の背後に回る。

「何一つ残すな。すべて回収するんだ」

指揮官の声に、残りの者たちが散開する。

黒崎と佳代の衣類、枕元に置かれたタブレット、二人分の財布と身分証……

それらがまるで元から存在しなかったかのように、無造作な手つきで次々と黒い袋のなかへ消えていく。

布地がこすれる音、プラスチックのぶつかる軽い音、ファスナーの閉まる鋭い金属音だけが、静まりかえった部屋にやけに大きく響いた。

佳代は両腕を拘束され、ベッドから引きずり降ろされた。

細い足が床に触れ、彼女は初めて自分の置かれた状況の現実を悟ったように、小さく息を呑んだ。

「……何なのよ。あんたたち……、一体……」

絞り出すような声だった。

指揮官は佳代の正面に立ち、彼女の顔をじっくりと観察した。

値踏みするような、あるいは検分するような視線。

それは、佳代がこれまで非モテと蔑み、見下すように眺めてきた、あの視線とまったく同じ種類のものだった。

佳代はその視線に射すくめられ、身動きができなかった。

「朝比奈佳代。二十六歳。職業、恋愛コラムニスト。独身。家族構成――」

指揮官は淀みなく佳代の個人情報を暗唱した。

その正確さが、かえって不気味だった。

佳代の両親の名前、住所、勤務先の所在地、日常の行動パターン。

すべてが、この男の掌中にあるかのように。

「……何が目的なの?」

佳代は震える声で問いかけた。

恐怖で崩れそうになる心を、必死に繋ぎ止めながら。


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