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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
黒塗りのロールスロイスが、石造りの重厚な正面玄関車寄せに滑り込んだ。
「…ここが…北白川家ですか…」
車の中から空に聳えるように建つ三階建てのゴシック様式の広大な洋館を見上げ、狭霧は息を呑んだ。
屋根には尖った塔がいくつかあり、赤い屋根の下には大きな硝子窓が張り出されている。

…客船は横浜港につつが無く到着し、迎えの車でそのまま、東京は麻布の北白川邸に向かったのだ。

だからまだ日本に着いたという実感がない。
…おまけに着いた先は、フランスの大貴族の屋敷と遜色もないような本格的な西洋建築の大きな屋敷だ。
…俺はまだパリにいるんじゃないか…。
そんな錯覚すら覚える。

「そうだ。
曽祖父が英国留学から帰国して、建てた屋敷なのでね。 
すべてが英国式だ。
館も、そして庭園も…。
階下を作り、英国貴族の家のように使用人の住居や仕事場とした。
…曽祖父は人一倍英国に強い思い入れと愛着があったからね」

「…ああ…なるほど…」
…微かに誇らしげなマレーの貌が思い浮かぶ。
『私はその娘の孫なのだよ…』

「…そうだ。車を降りる前に、伝えておこう。
この屋敷には橘という執事がいる。
…英国のマレー、東京の橘…と言われるほどに、厳格で威厳に満ちた有能な執事だよ」

伯爵にさらりと説明され、狭霧はぎょっとする。
「え⁈」
…またか…!
日本にもマレーさんはいたのか…!
狭霧は頭を抱えたくなった。

「まあそんなに悲観せずに、頑張りたまえ。
橘は厳しいが、心根は優しい男だ。
何なりと相談して教えを乞うと良い」
気軽にぽんと肩を叩かれ、狭霧は伯爵を睨みつけた。
「簡単に仰いますけどね…!
私がどれだけ…」

…その時、玄関先からふんわりとした白いドレスを着たまだ幼い少女が車寄せに駆けてくるのが見えた。
「…お父様…!」
可愛らしい声が響いた。

北白川伯爵が素早く車のドアを開き、車外に出る。
「梨央…!」
少女に向かって両手を広げる。
「…お父様…!おかえりなさい…!」
その少女はそのまま伯爵の腕に抱き上げられた。
「会いたかったわ…!お父様…!」

北白川伯爵が、少女を強く強く抱きしめる。
そうして優しく、情熱的に告げる。
「梨央…!私もだよ…!
お前に会いたくて会いたくてたまらなかった…。
やっと会えた…!
…私の可愛い可愛い梨央…!」







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