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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
…梨央という伯爵の娘は、息を呑むほどに美しく優美で玻璃のように繊細な煌めくような美少女だった。
「…ああ、梨央。
お父様によく貌を見せておくれ。
…お前はまた美人になったね。
美しくて可愛らしくて賢くてお淑やかで…世界一のお姫様だよ…」
甘く蕩けるような伯爵の声は、狭霧が初めて聴くものだ。
…このひとはやっぱり父親なんだな…。
しみじみと感じる。
「お父様もよ。
お父様も世界でいちばんハンサムさんだわ」
「ありがとう、愛しい梨央。
愛しているよ。
ずっとお前に会いたかった…」
まるで恋人に囁くかのような、甘い眼差しと声だった。
…少し妬けるけれど…て、俺が妬く必要はないんだよ…!
襟を正していると、伯爵の腕の中の梨央と眼が合った。
伯爵譲りの黒曜石のようにきらきらと輝く瞳だ。
梨央は濃く長い睫毛を瞬かせ、尋ねた。
「…お父様、あのお美しいお兄さまはどなた?」
伯爵は狭霧を見遣り、にっこりと微笑んだ。
「ああ…。梨央は初めて彼に会うのだね。
紹介しよう。
私の従者の泉狭霧だ」
「…ああ、梨央。
お父様によく貌を見せておくれ。
…お前はまた美人になったね。
美しくて可愛らしくて賢くてお淑やかで…世界一のお姫様だよ…」
甘く蕩けるような伯爵の声は、狭霧が初めて聴くものだ。
…このひとはやっぱり父親なんだな…。
しみじみと感じる。
「お父様もよ。
お父様も世界でいちばんハンサムさんだわ」
「ありがとう、愛しい梨央。
愛しているよ。
ずっとお前に会いたかった…」
まるで恋人に囁くかのような、甘い眼差しと声だった。
…少し妬けるけれど…て、俺が妬く必要はないんだよ…!
襟を正していると、伯爵の腕の中の梨央と眼が合った。
伯爵譲りの黒曜石のようにきらきらと輝く瞳だ。
梨央は濃く長い睫毛を瞬かせ、尋ねた。
「…お父様、あのお美しいお兄さまはどなた?」
伯爵は狭霧を見遣り、にっこりと微笑んだ。
「ああ…。梨央は初めて彼に会うのだね。
紹介しよう。
私の従者の泉狭霧だ」