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春雷に君
第2章 一夜明けて

スマホのアラームが鳴っている。

――あれ……解除してなかったっけ。

休日はアラームを設定していないはずなのに、と考えながら手さぐりでスマホを探すけど、いつもの位置にない。

――うーん……どこ……?

寝相が悪くて違うところにいっちゃったかな、と寝返りをうっていつもと逆の位置を探してみると、スマホではない何か別のものに手が触れた。
ほぼ同じタイミングでアラームが止まる。

やっと目を開く。
本当はまだ目を閉じていたいけど、時間を確認したい気持ちもあって。
だけど目に入ってきた光景に私の時間が停止する。

「……おはよ。ごめん、俺のスマホが鳴ってた」

寝起き顔の男が私に微笑む。

――この人……誰だっけ。

朝が弱くて頭が回らないでボーっとしていると男は心配そうな顔をする。

「体、大丈夫?」

「……?」

「おしっこ漏らしたあと気を失うように寝ちゃったから心配したよ」

――おしっこ……。

ハッとして一気に頭が覚める。

そうだった。
昨夜は市崎くんとお試しセックスをしたんだった。
市崎くんが果てたあと、私も果てて――……
自分の体を見るとホテルのガウンを着ていた。

「これ、着せてくれたの?」

「うん。裸のままはどうかと思って。かといって服だとシワになるかなって」

――なんて、気の利く。

「ありがと……」

「いえいえ。まだ寝る? それともシャワー浴びる?」

「あ……シャワー浴びたい」

「お先にどーぞ」

「うん……お先に」

そっとベッドから出て、そそくさと浴室へ向かう。
シャワーを頭からかぶり髪をササッと洗い、体も洗ってひと息つくと、昨夜のことを鮮明に思い出す。

――めちゃくちゃ、よかった……。

『俺なら、一人で藤崎のこと満足させるけどな』

自信ありげに口角を上げた市崎くん。
口だけではなく本当に満足させてくれたことに下腹部がきゅっとする。

――でも……。

本名も素性も知らない相手だからこそセフレという関係が成り立ってるのも確かで、中学からの同級生の市崎くんとセフレになっていいものかと思い巡らせていると、急に浴室のドアが開いた。

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