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春雷に君
第2章 一夜明けて

「えっ!?」

開いたドアの横に裸で立っている市崎くん。
驚く私を気にせず、浴室内に入ってきてドアを閉める。

「い、市崎くん?」

「背中を流してあげようかと」

「もう洗ったからっ」

「まぁそれは建前で、どうだったか早く聞きたくて」

――どうって……。

「俺、藤崎のこと満足させられた?」

熱い視線を向けられてドキッとする。

「セフレにしてくれる?」

「ええと……」

「満足できてないなら、今すぐもう1回できるけど?」

風呂椅子に座っていた私を立たせて抱きしめてくる市崎くん。
かたくなった下半身を下腹部にこすりつけられて、昨夜はコレでかわいがられたのか……と思うと体が熱くなる。

「……満足してます」

「ほんと!?」

「ただ……」

「ただ?」

「今いるセフレの二人とは、なるべく早く関係を終わらせるつもりだけど……期待はしないで。それだけ理解してもらえるなら、セフレになりましょう」

「……わかった。藤崎の事情を優先でいいよ」

「ありがとう。じゃ……先に出てるね」

市崎くんを見つめるとそっと体を離してくれた。
浴室から出るとシャワーが出る音がした。
バスタオルで全身を拭いて服を着る。

――とりあえず……会って、からかなぁ。

AくんもEくんもかれこれ一年以上の関係で、変ないざこざもなく続いただけにメールだけで簡単に終わらせるのは悪い気がしてしまう。

やっぱり直接言おう、と決めてドライヤーで髪を乾かす。髪が長くて量も多いから時間がかかってしょうがない。
半分ほど乾いたところで市崎くんが浴室から出てきた。

バスタオルを渡すと「ありがとー」と市崎くんは笑う。
ふと、高校生の頃の市崎くんはこんなに表情豊かだったっけ? と思いながらも、裸を凝視していると勘違いされたら困るのでドライヤーに集中する。

服を着た市崎くんに「貸して」とドライヤーを奪い取られる。
えっ……と口にするより先に「ほら前見て」と言われて素直に従う。
大きな手のひらで撫でるように髪を触られて心地いい。
美容師さんにやってもらってるみたいだな、と目を閉じているとしばらくしてドライヤーが止まった。

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