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春雷に君
第4章 清算
制服姿の自分を見て、ああ……夢か。と気づいた。
季節は――春っぽくて。
近くの空で雷がゴロゴロと鳴っている。
高校の制服を着た顔がよくわからない相手から告白されてそれを断っていると、物陰からガサガサと物音がした。
誰かいたのかとそちらへ目を向けると、無垢そうな顔をした男の子が顔を赤くしてこちらを見ていた。
目が合うと、男の子は慌てて走り去る。
ポツポツと雨が降り始めて、告白してきた相手も気まずそうに去っていき、ひとまず屋根のあるところに避難した私は腕を伸ばして降ってきたひょうを手のひらで受けとめる。
告白してきた相手はモヤがかかったように顔がよくわからなかったのに、男の子の顔はしっかりと見えた。
というか、あの男の子って――……。
そこで目が覚めた。
目をこすりながら首をひねると隣には市崎くんの寝顔。
――うーん……似てるには似てるんだけど……。
夢の中の男の子と市崎くんは似ていた。
あの告白は入学したての高1の春で、市崎くんと同じクラスになったのは高2だったから似てる気はするけど、確信が持てない。
わざわざ確認して、自分の恥ずかしい過去をさらすのもいやだし……と寝室の天井を見つめながら考え込んでいると、モゾモゾと隣で動く気配。
「……おはよ」
ふにゃりと笑う市崎くんがかわいい。
「おはよ……昨日は気づいたら寝ちゃってた。ごめんね。私がうとうとしてるとき……市崎くん何か言ってた?」
「いや……たいしたことは……おやすみくらいは言ったけど……」
私の言葉にぴくっと反応して目をそらす市崎くん。
何か、隠してる? と思ってじっと見つめていると、「藤崎、お腹すかない?」とはぐらかされたような。
でも正直、お腹はすいている。
昨日は18時頃に近くのカフェで軽食で済ませただけだから、この空腹の感じだと朝からガッツリ食べられそう。
「お腹すいて……死にそう」
「ふはっ、そんなに? 簡単なのでよければ作るよ。待ってて」
軽く笑って私の頬を撫でる市崎くん。
恋人と迎えた甘ったるい休日の朝っぽくて心がむずかゆい。